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株高の原因は流動性ではない:ウィリアム・ダドリー
2020年2月1日

ウィリアム・ダドリー元ニューヨーク連備総裁が、足元の株価上昇の原因をFRBのバランスシート再拡大とする見方に反対した。


「株式市場が上昇している理由は単純だ。
経済が良好で、企業収益が拡大しており、FRBが基本的に相当の間停止すると言ったからだ。」

ダドリー氏がBloombergで、足元の米国株市場の強さの原因を解説した。
ファンダメンタルズが良好な中で、金融引き締めの懸念が払拭されたためとの説明だ。
同氏は、1年あまり前と比べてFRBのスタンスに大きな変化があったことを認めている。
今後のFRBの政策変更はインフレ次第だとし、インフレが2%を超えるまでは検討さえしないと話した。

ダドリー氏は、昨年9月からの短期債買い入れが市場に大きな影響を及ぼしたとする見方に対して否定的なコメントをしている。

FF金利への影響の大きさはおそらく3 bp、つまり3/100%にすぎない。
だから、これが株式市場を10%も押し上げたというような考えはただただ信じられない話だ。

ダドリー氏は、準備預金の量と金融資産の買いとが直接結びつくものではないと説明した。

「みんなが考えているのは、FRBがTビルを買うと銀行システムに準備預金が追加され、何らかの形で漏れ出し、株式市場の需要拡大につながるというものだ。
しかし、現実には銀行システムから準備預金が漏れ出すことはない。
誰かが銀行からお金を引き出して買物をすれば、そのお金は銀行システムに戻ってくる。
銀行は、銀行システムにある準備預金の量に影響を与えることはできず、それはFRBが決める。
この準備預金は、債券や株を買うといったような他のことには使えない。」

この説明は正しいものの、同時に量的緩和政策の孕む矛盾も表している。
金融政策において準備預金の《量》は本質的な存在ではないということだ。
量的緩和の本質は量にあるのではなく、やはり金利にあるという考えが正しいのだろう。

ダドリー氏は、QE1からQE3までと現在のTビル買い入れの相違点を説明した。

  • QE1-3: 長期金利押し下げのためにデュレーションの長い資産を買った。
    「長期利回りが低下した時、株式は魅力を増した。」
  • Tビル買い入れ:利回り操作を目的とせず、準備預金の量を増やすことが目的。
    昨年9月のレポ金利急騰のようなリスクを予防したい。

この説明もまた完全に正しい。
しかし、これで納得する市場関係者は少ないだろう。
彼らは今回のTビル買い入れの最初から、その意図を理解していたからだ。
彼らにとって重要なのはFRBの内心ではなく、市場で現実に起こる結果なのだ。
しかも、Tビル買い入れをQE回帰とみなす人には、金融緩和(の程度・期間)が過剰なのではないかとの疑いを持っている人が多い。

また、量的緩和は長期金利押し下げとともに心理的効果も及ぼしたはずだ。
換言すれば、人々の期待に働きかけようとしたはずだ。
そうならば、Tビル買い入れで同様の効果が起こるのも当然だ。
モハメド・エラリアン氏は度々、FRBが市場に対し「過度な流動性の約束」をしていると警告している。
単に「過度な流動性」といわずに「過度な流動性の約束」といっているのは、準備預金の仕組みを理解しているからだろう。
「流動性」は過度でも漏れ出すことはないが、「流動性の約束」は自在に市場を覆うことができる。

ダドリー氏は、Tビル買い入れが4月の納税シーズン後に終了するだろうとのFRBの意向を明かした。
仮に同政策が株高の原因ならその時に神経質な展開になるが、そうはならないと考えているという。
一方、FRBは政策の意図・内容、それが株高の原因にならないことを丁寧に説明すべきと話した。

ダドリー氏は、市場の刺激・経済の刺激のバランスについて問われると、金融安定の重要性を強調している。

最終的には、金融環境の中でFRBがどう経済をドライブしていくかの話になる。
株式・債券・為替・短期金融の各市場はすべて経済をFRBが望むようにドライブしていくためのパーツになる。
だから、FRBは金融政策の決定において金融資産の価格を勘案しなければならない。


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