ジェレミー・シーゲル教授が、株式/債券ポートフォリオについて重要な注意喚起をしている。
状況が落ち着いているかぎりは、金利は現状で長い間高止まりするだろう。
株式は・・・年末にかけまだ横ばいか上向きだ。
シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで強気予想を継続した。
実績のデータ(「real data」)に経済が悪化する様子は見られないという。
おそらく、各種予想や信頼感にやや弱気のものが見られる点を意識したものだろう。
シーゲル教授が強気なのはいつものこと。
特筆に値しない。
今回のポッドキャストでは、むしろポートフォリオにおける債券の役割についてのレクチャーが興味深かった。
教授は、債券を用いたリスク・ヘッジについて見過ごされている点を解説した。
「投資家が60-40とか75-25ポートフォリオを保有する理由はヘッジだ。
危機になると米国債は上がり、リスク資産は下がる。
みんなその効果を好む。」
ここまでは教科書通り。
そして、話は近年私たちが経験してきた現象に移る。
株式と債券が正の相関になるケースだ。
こうなると、期待したリスク・ヘッジが働かなくなる。
シーゲル教授は、相関が正になるあるケースを挙げている。
ところが、ある種の予想外のこと、危機ではなく状況というべきものだが、この(負の)相関が完全に崩れることがある。
それが、FRBがインフレ退治しなければならない時だ。
極端な例としてスタグフレーションを考えればよい。
不況だから株は下がる。
インフレだから債券も下がる。
株と債券の組み合わせでは逃げ場は見出しにくい。
シーゲル教授は今後、正の相関の時期が増えると心配する。
「今回のインフレまで40年、インフレはなく、ほとんどの投資家にとって発生確率はとても小さかった。
今インフレに見舞われ、今後10-40年FRBがインフレ退治をしなければならない確率ははるかに高くなるだろう。
そうした環境で債券はヘッジとして働かないだろう。」
株式への長期投資の応援団長は、債券をディする。
1つ目は先述の通りヘッジ効果が小さくなっている点。
投資家はヘッジ手段としてでなく、利回りだけを見て投資するか否か決めるようになるという。
2つ目はその利回りだ。
実質利回り2%なら倍になるのに36年かかるが、PER 20倍、実質益回り5%なら14年で倍になると主張した。
債券は3年前と比べれば相対的な競争力が増したものの、長期ではまだ株式に及ばないという。
もっとも、シーゲル教授の主張は少し割り引いて聞いた方がいいかもしれない。
理由は2つ。
1つ目は、株式リスクプレミアムが存在する限り、教授が指摘する利回り格差は存在し続ける。
永続する利回り格差にはそれなりの理由があるのかもしれない。
もう1つは、債券の再投資の効果だ。
債券が償還にかかると、その資金は再投資される。
この時、債券の弱気相場なら再投資の利回りは上昇している。
つまり、ホライズンによっては、債券の利回りは今見ているほど悪くないかもしれない。
シーゲル教授はもう1つ重要な命題を話している。
物価連動債は長期でインフレのヘッジになるが、FRB利上げのヘッジにはならない。
物価連動債がヘッジするのは、あくまでインフレにすぎない。
実質金利上昇のヘッジではないのだ。