ビル・グロス氏が、米国債と米国株の値付けに見られる乖離を指摘し、暗に株価が調整する可能性が高いと匂わせている。
EPSの水準や将来の仮定は全体像の一部にすぎず、明らかになったように、金利変化と比べれば株価に小さな影響しかない。
金利変化は長期の価値に支配的影響を及ぼす傾向がある。
グロス氏がInvestment Outlookで、実質金利の株価に及ぼす影響について書いている。
S&P 500の予想PERと米実質長期金利との間に強い相関があることを示し、PERの逆数である益回りと実質金利の間に相関があるためと示唆している。
ところが、この相関は2022年秋以降乖離を始めた。
強い経済、金利低下観測、AI効果などと多くの説明がなされているという。
FRBが(利上げを)停止し利下げすれば、強気相場になると楽観派は主張する。
まあまあ、急がないで。
グロス氏は強気相場到来予想には懐疑的だ。
仮にこの相関が続くなら(このInvestment Outlookと同時期のBloomberg出演でも語ったとおり)PERは12倍になっているはずとグロス氏は指摘。
足元の18倍との間にあまりにも乖離がありすぎるという。
結論に至っていないとしながらも、強気相場予想に懐疑的な理由をいくつか挙げている。
- AIや、高成長の主因である財政出動が「今回は違う」を正当化できるか?
- 利下げをしなければ景気鈍化・後退を招く可能性が高い。
- 3%インフレの時代を迎え、大きな利上げは難しい。
将来のトータル・リターンで言うなら、私は株式や債券はパスしたい。
「将来のトータル・リターン」という言葉には、ある程度長いホライズンという意味が込められているのだろう。
つまり、短期トレードを否定したとは限らない。
その理解の上で、債券王が債券をパスすると言っている。
近年になく高い利回りでもパスするというなら、高い利回りをオフセットするような低いキャピタル・ゲイン/ロスを見ているのだろう。
つまり、金利は容易には下がらないとの見方だ。
ならば、先述の乖離が解消する方向はPERの方で起こる可能性が高いということになる。
「とにかく実質(そして名目)10年金利を注視することだ。
現状の予想PERを正当化するにはかなり下がる必要がある。
そうならないかもしれない。」
グロス氏は魅力的な投資先として従前どおり、M&A関連の裁定取引、パイプラインMLPを挙げている。