ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、選択肢のない投資環境を説明し、株式を「究極の実物資産」と呼び、その理由を説明している。
『今後5年で弱気相場はやってくるか?』と聞かれたら、私はイエスと答える。
『今市場から撤退した方がいいか?』と聞かれたら、ノーと答える。
シーゲル教授がCNBCで、全く意外性のない強気発言を繰り返している。
ただし、今回口にした強気の理由は少し怪しげなものだった。
「10-20%下がるまでに50%上がる可能性があるからだ。
調整はあるだろうが、そうした調整の前にはしばしばはるかに大きな上昇があるものだ。」
確かに米国株市場は基本的に右肩上がりを続けてきたし、サイクル終期に急激な上昇が起こる例が多い。
シーゲル教授は、そうした経験則が、マーケット・タイミングに投資家を誘い込むと付け加えている。
シーゲル教授の注目点は依然としてインフレの動向だ。
教授はこれまで一貫して今後数年の高いインフレを予想してきた。
今回の出演でも、FRBがすでに3か月前にテーパリングを開始すべきだったという。
教授は、タカ派的な見方を継続している一方、FRBの金融政策正常化が市場を悪化させるとは考えていないようだ。
「テーパリング開始が早まり、利上げが2022年に始まるかもしれない。
でも、インフレが7%の時に誰が1%のFF金利を恐れるだろうか。」
仮に7%のインフレになっているとして、FF金利が1%なら実質金利は-6%。
経済に問題をきたしかねない低さだ。
つまり、金融政策正常化がかなり進んでも、インフレが高いなら、金融政策は緩和的なままであり続ける可能性が高い。
だから、シーゲル教授の株式信仰は変わらない。
「インフレが上昇するから、現金・債券・貨幣性資産で持つべきでない。
株式は実物資産だ。
確かにこの先、揺れはあるし、私はテイパー・トレマーと呼んでいる。
でも、以前と比べて今は選択肢がないんだ。」
インフレ期の投資の定石の1つが実物資産への投資だ。
シーゲル教授も、土地・不動産など実物資産に投資したいと述べている。
その上で、株式を「究極の実物資産」と呼んでいる。
株式にはレバレッジがかかっており、借金が内包されている。
現在、借金をすればそれより大幅に価値の小さいお金を返せばいい状態であり、可能な限り借金をするのが有利になる。
しかも、かつてないほど流動性が潤沢にあるため、(企業は)コスト増を価格に転嫁するのにも支障がない。