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株式は「最もきれいな汚れたシャツ」:モハメド・エラリアン
2021年11月28日

アリアンツ経済顧問のモハメド・エラリアン氏がゴールドマン・サックスによるインタビューで、政策や投資についてバランスのとれた見解を披露している。


「市場参加者は、ファンダメンタルズから見て値付けが間違っていることを確信していても、何度も経験したように、FRBの資産買入れに逆らえば踏みつぶされてしまうことを理解し重んじている。
FRBがもたらした歪みがどれだけ調整されるかわからないため、インフレ期待を測る通常の市場の指標に頼るのには注意が必要だ。」

エラリアン氏がゴールドマン・サックスによるインタビューで、インフレの先行きを占うのに市場の指標を用いることができないと話している。
ここでいう指標は言うまでもなく(国債利回りと物価連動債利回りの差である)ブレークイーブン・インフレ率だ。

米ブレークイーブンインフレ率(緑:5年、赤:10年、青:30年)
米ブレークイーブンインフレ率(緑:5年、赤:10年、青:30年)

足下のCPIに比べればブレークイーブン・インフレ率は落ち着いている。
これを根拠に足元のインフレが一過性と主張する人がいるが、エラリアン氏の考えは異なる。
米国債も物価連動債もFRBの影響を受けている可能性があるためだ。
同氏によれば、サーベイによるインフレ期待の調査結果(より高いインフレ期待を示している)の方が実態を表しているという。

エラリアン氏は、FRBが総需要不足の世界のために設計された枠組みで政策を決めてきたと指摘する。
現在は総供給不足にあり、FRBのアプローチではインフレへの反応が遅れるという。
結果として後に急ブレーキが踏まれる可能性が高くなるという。

テーパリング後にとても速く利上げが行われ、早期に引き締めを開始していた場合に比べてより急激になる可能性だ。
こうしたシナリオは歴史的な政策ミスを生み出すだろう。
なぜなら、貧しい者に最もつらくあたるインフレの発作の後、経済が吸収しきれない急激な引き締めにより成長に過度な打撃を受けるリスクがあるからだ。

エラリアン氏は以前から悪化する格差問題を心配してきた。
この先も、まずインフレが弱者を苦しめ、その後の景気後退が弱者を苦しめる展開を心配する。
特に財政・金融政策が同期しないか心配だ。
財政政策が縮小に向かう時期と金融引き締めが同時になってしまう展開だ。
逆向きの財政・金融政策の協調は、順向きの協調と同様強い効果を発揮するだろう。

「緊急対応の金融政策は供給側の問題を解決できるのか?
Noだ。・・・
最後の質問は、それを続けるのにともなうコストはどれほどか?」

緊急対応の政策がいまだに続いていることをエラリアン氏は疑問視し、問題点を3つ挙げている:

  • 需要面で役立っていない。
  • 市場の事故(例えばミーム株やアルケゴス)の確率を上げている。
  • 資源の配分を歪めている。

話題が投資の話に移ると、かつてPIMCOでCEOや運用者として活躍した投資家は感慨を述べた。

「まだ債券ファンドの運用をしてなくて本当によかった。
現在のフィクストインカム市場はマクロのファンダメンタルズでなくテクニカルが支配していて、こうした大きな動きにつながっている。」

エラリアン氏は主要資産クラスについてコメントしている:

  • 株式: 「合理的バブル」。
    投資家は認識しているが「相対的バリュエーションのパラダイム」におり、株式投資に意義を認めている。
  • フィクストインカム: ファンダメンタルズに関係なく、FRBによりリスク-リターンが一方方向に歪められている。
    分散の手段としての信頼性が失われている。
  • オルタナティブ: 一般投資家は未公開市場への投資が難しく、暗号資産にも躊躇している。

多くの賢明な投資家にとって喜んで取り組める資産クラスがない。
まさに究極の選択を強いられている。

このため株式市場は投資家にとって『最もきれいな汚れたシャツ』になっている。
パラダイムが絶対バリュエーションでなく相対バリュエーションであるうちは、この方針でうまくいく。
市場はしばらくこのパラダイムを続けるだろう。

債券利回りが下がったから株に有利という話は強気派の人が好む話だ。
まさに相対的な思考によって株が有望というレトリックであり、その前提は低い債券利回りが持続可能であることにある。
目下の低い利回りを持続させてきたのは(低成長だけでなく)中央銀行であろう。
成長・インフレが高まった今、中央銀行が金利を極端に低く保つ正当性が揺らぎ始めている。

投資家はFRBのおかげで大きな流動性の波に乗れていることを忘れてはいけない。
その波は、金融刺激策が巻き戻すにつれ、最後には壊れる。


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