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株価上昇は中銀プットのためではない:ジェレミー・シーゲル
2020年6月12日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、現在コロナウィルスより大きくなったリスクを指摘し、残った割安市場について言及している。


重要なのはこれ(株価上昇)の背景にあるのが良いエコノミクスだということだ。

シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、米国株市場がコロナ・ショックの急落から史上最高値圏まで戻した背景を語った。
勘違いしてはいけないのは、良い経済(エコノミー)といっているのではない点だ。
実際、教授は、ほとんどのエコノミストを驚かせた先週金曜日の雇用統計の改善について「解釈が難しい」と慎重な見方をしている。
そのシーゲル教授が指摘したのはエコノミクス(経済の状況)である。

「FRBから供給される流動性の洪水は先例のない規模で、リーマン危機時を超えている。・・・
この流動性が居どころを求め、短期・中期では株式になる。
インフレと莫大な債務。
莫大に積み上がった購買力をアメリカ人が手にしている。」

著名投資家が見落としたこと

シーゲル教授は、まだ最終的な結果が出ていないとしながらも、多くの高名な投資家が株式市場の回復を見誤ったと指摘した。
教授が挙げたスタンリー・ドラッケンミラーデビッド・テッパー、ウォーレン・バフェット(航空株)をはじめとして慎重なスタンスで大きく外した投資家は少なくない。
教授は、こうした投資家の失敗の原因をマネー・サプライを無視したためと指摘する。
流動性の力は、他の不利な材料すべてを押し返すほど強かったのだ。

シーゲル教授は、ウォートンでの教授職を兼任するモハメド・エラリアン氏についても読みを誤った1人として言及した。
特に同氏の「FRBが市場にプットを与え、そのプットが市場を歪めている」との指摘に異議を唱えている。

これは正しくない。
市場を歪めているのではない。
ただ、膨大な流動性が供給されているだけだ。

今米政府やFRBが市場に奉仕しているやり方は、価格が下落したら買い支えるとの暗黙の約束ではない。
現実にマネーを市場に流し込むことだ。
これは、どこかに行き場を求めなければいけない。
インフレへの警戒も必要な中、最も有利な行き先の1つが株式なのだ。

実際にマネーが供給されているのだから、プットというのは適切ではないかもしれない。
その一方で、プットでなくとも、莫大な流動性が市場を歪めているというのも正しい見方のように思える。

今ウィルスより大きなリスク

「みんなが言うのは、第2波が来たとしても、私たちは家庭内でコントロールし、以前のようにロックダウンしないだろうということ。
仮に第2波が起こっても、もっと大きなお金が投じられる。
経済に大きなお金が投じられることは、先行きの株式にとっては良いことだ。」

米国は(妥当か否かは別として)コロナウィルスの封じ込めに自信を持ちつつあるようだ。
場合によっては、株式市場にとってウィルスは過去のものになるのかもしれない。
代わりに株式市場が警戒するのが5か月後に迫った選挙だ。

大統領と上院を民主党が獲り、下院はもちろん民主党になったら、大きな変化が起こることを考えないといけない。
バイデンの税制案を見ると、高所得者・資本家にとってかなり懲罰的なものになっている。

シーゲル教授は、バイデン候補の税制案において法人税や株式リターンに対する増税が盛り込まれている点を警戒する。
法人税については、税率を現行の21%から28%に引き上げ、控除等を撤廃するというものだ。
(トランプ減税前は35%。)
この税制改正が実現すれば、10年間で1.4兆ドル超の企業収益が奪われると推計されるのだという。

民主党勝利で株価はどれだけ落ちるか?

教授は共和党支持。
2017年のトランプ減税も、トランプではなく共和党の減税だとして強く支持した。
米政府が極端に小さな政府であることを考えると、日欧の人間からすれば、この程度の増税を問題視する感覚は理解しがたい。
時として弱い者への心配を漏らすシーゲル教授が、増税を語る時には価値観を含めて嫌悪感を滲ませているように聞こえる。
なんとも不思議な現象だ。

選挙日が来て、民主党が上院を(大統領と下院とともに)獲れば、投資家は打撃を受ける。
それは合理的な打撃だ。
5-6%下落するだろう。
しかし、刺激策は続けられる。

日本人ならいうだろう。
それだけ税収が増える一方、株価は5-6%の下落で済むのか、と。
それをネガティブに捉えるべきなのか。
米国の経済的リベラリズムとは本当に不思議なものだ。

さらに、コロナウィルスのリスクは5-6%の下落ほどもなくなったのかと驚かされる。

新興国市場はまだ割安

名だたる著名投資家がそうだったのだから、一般の投資家の中には今回の株価回復で出遅れた人も多いはずだ。
しかし、米国だけでなく日本もまた株価はコロナ・ショック前にまで戻してしまった。
他にどこが残っているのか。

シーゲル教授は、新興国市場はまだ割安だと話す。

もしも穏やかなインフレのシナリオが実現するなら、まずドル建て債務負担が軽くなり、次に・・・ドルの流動性の結果コモディティ価格が底堅くなることで多くの新興国の助けになるだろう。・・・
中国からのシフトはいくつかの新興国にとってプラスになる。
中国にはマイナスになるが、中国経済はもはや米経済と同規模になりつつあり、輸出に頼る必要もなくなるだろう。


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