海外経済 投資

株価を押し上げる厳しい現実:ジェレミー・シーゲル
2020年6月4日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、大恐慌以来の失業の中、株高が進む構図について解説している。


低所得・低残高の個人のチェック口座(の残高)が1年前から15-20%も急増している。
彼は、こんな増加は見たことがないと示唆した。

シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、バンカメCEOの発言を紹介した。
この現象は、教授が株高を予想する根拠となった待機資金の積み上がりを証明するものだ。
この積み上がった流動性が経済の再始動とともに実体経済・市場に流入すれば、経済回復・インフレ・株高の要因となっていく。

教授が予想するような4-5%のインフレとなるなら、FRBは金融引き締めで退治しようとしないのか。
シーゲル教授は、失業率が年初の3.5%に向かって下がるようには見えないと指摘。
失業率が十分に下がらないため、FRBは引き締めに転じることができないと予想する。

FRBは失業した人たちを可能な限り吸収するため、経済を過熱させる。

企業収益も軽微な株価影響と摺り合う

シーゲル教授は、暫定的なS&P 500の利益予想を明かしている。
2020年の「operating earnings」(注:特別項目を除く税引後利益を指していると思われる。)は2019年比30%減で、予想したほど悪くなかったと話す。
2021年は2019年比で3%増の予想だという。
教授は従来から、直近1年の利益が株価に占める割合は10%未満と説明してきた。
10%未満が30%減となったから、株価への影響は3-4%に過ぎないと解説している。
この利益予想が当たっているなら、極めて理路整然とした話だし、現状の株価を説明できているように見える。

バリュー株は復活するか?

過去10-15年(グロースに対して)記録的なアンダーパフォームを遂げたバリューについて、シーゲル教授は循環・趨勢の両面から予想する。

長い目で見て強気になれないようだが、足元についてはそれほど悲観する必要もないようだ。

現在のバリューの大幅な割安を見る限り、バリューがアウトパフォームすると思う。
しかし、過去10-15年を見直し、そこでの負けを取り戻すだけのアウトパフォームがありうるかといえば難しい。・・・
今後数年でいっても、バリュエーションや利回り追求の動きからいってバリューが有利だ。

合理化・リストラが生産性を押し上げる

今週のポッドキャストでシーゲル教授はもう1つの観点に重点を置き始めている。

この経済システムへのショックは、途方もないほど労働力の再編成をもたらすだろう。
企業はついに決断し始めた。
この人たちは要らない、この出張は要らない、ある割合の人はテレワークでいい、と。

したたかな米企業が、彼らの定石通り、危機を逆手に雇用・業務の合理化を始めたのだ。
実際、米企業は何らかの危機をリストラの好機と考える傾向が強い。

シーゲル教授は、その倫理的是非を別として、こうした再編成が「劇的な生産性向上」をもたらすと予想する。
全体のパイが増えるわけではないが、生産性が上がり、利益率が向上する。
これは間違いなく株高の要因だろう。

シーゲル教授はこのプラス要因を語る時、必ず同時に労働者にとっては困難でもあると言い添える。
教授の態度は、大恐慌以来の失業率の中での株高を象徴している。
シーゲル教授は、一見矛盾のように見えるこの現象を解説する。

閉店した企業、レストラン、小売店などについて考えると、どれも株式市場と関係がない。
上場企業じゃない。・・・
Google、Facebook、Microsoftなどの企業がどれだけ雇用を増やしたか?
ほとんどゼロだ。
これが現実なんだ。

シーゲル教授は以前からこのギャップに心を痛めていた。


-海外経済, 投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。