スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が、高い株式市場の中にも存在する投資チャンスについて書いている。
『変えることのできない1つの現実は、高価格の資産が低価格の資産よりも低いリターンをもたらすということだ。
高価格と高リターンは両立しない。
今(高価格を)享受するか、遠い未来に堅実に(リターンを)享受するかのいずれかであり、両方はできない。
市場がどんどん上がることの付けは、ピークからの10年のリターンが下がることだ。』
これはファーバー氏の言葉ではない。
マーク・ファーバー氏が「不撓不屈のバリュー投資家」と呼ぶジェレミー・グランサム氏が先月12日CNBCで述べた言葉だ。
ファーバー氏は、この意見に「完全に同意」し、月次のコメンタリーGloom Boom Doomで紹介したのだ。
エントリー価格が重要というのは投資の世界のコンセンサスだろう。
現在が高値と見るならば、今やるべきことは高値で売るか、将来の低リターンを甘受するかになる。
ファーバー氏の意見を読み進める前に、まず、グランサム氏の意見を見直しておこう。
「上昇が壮観なものになり、長く続くほど、正真正銘のバブルだとの確信が高まる。」
グランサム氏は6月にバブル発生を指摘し、その見方を現在も続けている。
トランプ勝利なら市場にプラスと言っていた市場は、バイデン勝利でも上昇した。
こうした1つ1つの兆候がバブルを示しているという。
「バブル崩壊のタイミングをうまく予想できるなどという幻想を抱いたことは一度もない。・・・
遅かれ速かれ、市場は、私が逃げ出せと示唆したポイントより下げるだろう。」
グランサム氏の信念は1ミリも揺らいでいない。
追加財政刺激策が講じられても、バブル継続は12か月が限度で、24か月続く可能性は極めて少ないと話している。
そこで冒頭の発言になる。
主たるメッセージは、リスク資産へのエクスポージャーを減らせということになろう。
ファーバー氏は、グランサム氏に「完全に同意」しながらも、マクロでは捉えきれない部分について指摘している。
それと同様に、数年にわたり株式が大きく下げれば、将来リターンは魅力的になる。
ファーバー氏は先月、最近まで大きく下げていた新興国市場について調査したのだという。
その結果、調査の対象を世界中に広げる必要があると結論したという。
FAANGや関連銘柄の強さが、極めて多数の銘柄が長期見通しにおいて極度に押し下げられているという事実を見えにくくしているのではないか調べるためだ。
驚くことではないが、米国においてさえ、株式市場が極めて高い中で、数百の下げている株式があることがわかった。
つまり、銘柄選別が重要ということだ。
これはとても興味深い風潮を表している。
ファーバー氏は《終末博士》と呼ばれることがある弱気派だ。
その弱気派がバブルに同意していながら、銘柄選別の上で買うチャンスを探せと暗示している。
これが、今回のバブル(?)の特徴かもしれない。
メイン・シナリオをいつものようなバブルとその崩壊とするにしても、奇妙なリスク・シナリオがありそうだ。
なんらかの崩壊がある場合でも、リスク資産の方が安全資産より優るという可能性だ。
想像しがたくありそうにないシナリオだが、最近の弱気派投資家の言動は、そうしたシナリオを無視しないよう暗示しているように感じられる。