本質的な保護主義の予防法:リチャード・クー

野村総研のリチャード・クー氏が、自由貿易を守るために必要なことを解説している。
経常収支黒字国の一方的な論理に偏らないスクエアな意見が新鮮だ。


保護主義がこれ以上ひどくなる前にどうやって貿易収支を均衡に近づけるか。
こうした問題を、とくに黒字国の人々は真剣に考えなくてはいけません。

クー氏が東洋経済オンラインで書いている。
貿易不均衡の継続にいらつく米国の立場も配慮しつつ、対米貿易黒字国である中国、日本、台湾、韓国なども問題意識を持つべきと指摘している。

では、どうすれば解決するのか。
それには貿易不均衡を定着させているメカニズムの理解が必要だ。
本来なら黒字国の通貨は高くなり、赤字国の通貨は安くなり、それが貿易を均衡させるように作用するはずだった。
ところが、その自動調節機能が働かない状態が続いているように見える。

クー氏は、貿易不均衡の原因を「資本移動の自由化」に求めている。

日米では1980年前後に資本移動の自由化や金融自由化に踏み切った結果、今の為替市場の95%の取引が資本移動関連となり、貿易関連の取引はわずか5%となってしまったのです。

この95%はどういう理由で動くかといえば、貿易収支の均衡など考えていません。
とにかく、どこの国の金利や資本リターンがいちばん高く見えるかで動いています。

かつては為替は経常収支の影響を強く受け、貿易不均衡を解消するような方向に動く傾向があった。
しかし、国際間の資本移動が自由化されると、為替は経常収支より金利差などの影響を強く受けるようになった。
結果、必ずしも貿易不均衡を解消するような影響を及ぼさなくなったのだ。
クー氏は明記していないが、為替のロジックが国際間の資本移動となったなら、それに大きな影響を及ぼすのが各国の金融政策であるのは明らかだ。


クー氏はこうした状況が過去40年間続き、ついにトランプ政権を誕生させ、保護主義を台頭させたと書いている。
同氏は、資本移動を規制する可能性に言及している。

労働者が国境を越えられない中で、資本だけが国境を自由に移動するとどのような問題が発生するのか。
資本移動のプラスとマイナスをもっときちんと研究する必要があります。
どういう局面なら移動を自由にし、どういう局面なら規制するかを決めたほうがよいでしょう。

こうした規制がありうるだろうか。
黒字国は資本の出し手となり、赤字国は資本の取り手となるのが国際収支の仕組みだ。
これを規制するなら、ある場面において黒字国が資本を出せず、赤字国は取れないようなルールになる。
とてもルール化できるようには思えない。
では、資本規制ができないならどうなるか。

もし資本移動を規制しないのであれば、1985年9月のプラザ合意のような大規模な為替調整をタイミングよく実施するしかありません。

これは、日本が現在最も恐れるシナリオだろう。
日本は円高をとにかく嫌い、建前は別として、日銀にとって為替は最重要パラメータだ。
クー氏の「為替調節」への言及は、現状の規定路線を覆すものだ。

(参考: 【メモ】ケインズのバンコール構想

なぜ、ここまで大胆な言及をしたのか。
その一因には、クー氏の金融政策に対する考えがあるようだ。
それは原文(日本語)をご覧になればよくわかるだろう。

(ご記載を訂正しました。)


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