木内登英氏:2%物価目標は傲慢

7月まで日銀審議委員を務めた木内登英氏が、異次元緩和のイデオロギー部分に挑んでいる。
物価目標の2%という数字には意味がないと言い切っている。


「政策効果だと思っている部分もかなりの部分は世界経済の回復に助けられてきた。
いろんな政策の中で、金融政策にかなり重荷が偏ってしまった印象だ。」

木内氏はBSジャパンで、アベノミクスの5年間を辛口に総括した。
安倍政権下での日本経済の回復の大部分を世界経済の回復の波及と考えているようだ。
海外からの波及であるかは別として、アベノミクスが経済循環から見て絶好のタイミングでスタートしたとの指摘は多い。
日本経済の最悪期が2012年初頭に訪れ、景気もドル円もそこから自律的に立ち上がろうとしている時、政権交代が起こったのだ。

2%物価目標は傲慢

木内氏は「第1の矢」異次元緩和についても辛辣だ。

「もともと2%の物価目標がいいという根拠はほぼない。
多分、実際の物価動向から見て高すぎる。
物価目標は企業・家計が『これぐらいがちょうどいい』と思うところに設定するのがいい。
実際1990年代初め以来ついたことのない2%を正しいとするのは傲慢なやり方だ。」


日銀が2%の物価目標をいまだに達成できないのは、まさに目標の設定が誤っていたからだという。
《デフレは貨幣現象である》という命題は、この数年の日本での社会実験を経て誤りであることが証明された。
やはり、物価とは実体経済における需要と供給で決まるものなのだ。
木内氏は、物価の大きな決定要因として「経済の実力、潜在力」を挙げている。
これは短期間で向上するようなものではない。
経済政策が構造改革より金融政策を偏重していたとすればなおさらだ。

経済の実力に合わせた物価目標を

木内氏は、日本の物価水準が1980年代以降、他のG7諸国に比べて約2%低い点を強調する。

「日本は他の国より少しインフレ率が低い方がいいという個性がある。
それにあわせて国それぞれのインフレ目標があっていいとすれば、日本は欧米よりもっと低い水準が妥当だ。
0.5%からせいぜい1%ではないか。」

諸外国との間で物価目標を揃えることに意味がないとはいえない。
理由の一つは為替への影響だ。
物価目標において各国間の差が存在することは、各国間での基調的な物価水準の差異を許容することになる。
低い物価は長期的には円高要因となるから、これまでの日本ではあまり受けなかった。
しかし、物価目標の差が1%であったならどうだろう。
年間1%の円高は許容できないものだろうか。
むしろ、恒常的な経常黒字の代償としては安いと言えまいか。

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