最大の脅威は何か:ジェフリー・サックス

コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、米国の要請で執行されたカナダでの中国HUAWEI孟晩舟CFO逮捕についてコメントした。
その中で、世界平和にとっての最大の脅威について言及している。


「マーク・トウェインの有名な言葉『歴史はしばしば韻を踏む』のように、私たちの時代は1914年以前の時期にますます似てきた。
当時の欧州の列強のように、米国が中国を圧倒していると政権が主張しようとすれば、それは世界を災難に追いやることになる。」

サックス教授がProject Syndicateで書いている。
覇権国家が新興勢力を叩く時、世界は戦争に巻き込まれる。
教授は今そういう気配を感じ、心配している。

サックス教授によれば、HUAWEI CFO逮捕は極めて異例なことだという。
米国では、企業経営者が個人的な罪で逮捕されることはあっても、企業の犯した罪で逮捕されることは稀という。
本来なら企業の犯した重大犯罪で経営者を逮捕すべきだが、現実にはそうなっていないのだという。

「例えば2011年、JP Morgan Chaseはキューバ・イラン・スーダンへの米制裁違反のために88.3百万ドルの罰金を支払った。
でも、ジェイミー・ダイモンが飛行機から引きずり出され拘置所に放り込まれることなどなかった。」

確かに今回の逮捕は異様だ。
あれほどの地位の人に対し、逃亡の危険ありとして保釈を渋った。
保証人を要求するのはいいとしても、足に発信機までつけるほどの状況なのか。
もし、そうだとすれば、世界はすでに開戦前夜なのかもしれないと思えてくる。


サックス教授は、制裁違反を犯した他の企業名も列挙する:
Banco do Brasil、バンカメ、Bank of Guam、Bank of Moscow、東京三菱銀行、Barclays、BNP Paribas、Clearstream Banking、Commerzbank、Compass、Crédit Agricole、Deutsche Bank、HSBC、ING、Intesa Sanpaolo、National Bank of Abu Dhabi、National Bank of Pakistan、PayPal、RBS (ABN Amro)、Société Générale、Toronto-Dominion Bank、Trans-Pacific National Bank (Beacon Business Bank)、Standard Chartered、Wells Fargo。
たくさんのビッグ・ネームが並ぶが、これら企業のCEO・CFOが制裁違反で拘置所に入れられたことはない。
現在の米国は、明らかに中国、Huaweiを他と異なるやり方で取り扱っている。
その背景には5G通信技術などに象徴される競争上の心配があると教授はいう。

「米国は、Huaweiがそのハードやソフトの備える隠れた監視能力により特定のセキュリティ・リスクをもたらしていると主張する。
しかし、米政府はその主張に対する証拠を何も示していない。」

証拠を見つけるのはたいへんだから、とりあえず危なそうなところを「ブラック・リスト」にしたにすぎないとサックス教授は示唆する。
こうしたやり方は、イラクの(幻の)大量破壊兵器の例でも明らかなとおり、米国の常套手段になっている。
確かに、仮にHuaweiが自社製品に監視機能を潜り込ませていても驚きではない。
しかし、それを米国が糾弾し、逮捕するのか。
米国は、同盟国の首相や自国民まで盗聴している国だ。

サックス教授によれば、本当に危ないのはブラック・リストに載った当事者ではないのだという。

外国の当事者に対する制裁(例えば中国企業に対する米制裁)は、一国だけで執行すべきでなく、国連安保理事会での合意に基づいてなされるべきだ。
これについて国連安保理決議2231は、2015年のイラン核合意の一部として、すべての国にイランへの制裁を解除するよう求めている。
しかし、米国は、米国だけは、現在こうした事案についての安保理の役割を拒否している。
国際的な法の支配、しいては世界の平和にとっての今日の最大の脅威とはHuaweiや中国ではなく、トランプ政権なのだ。


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