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アスワス・ダモダラン 最大の心配事と市場が二分されている理由:アスワス・ダモダラン
2021年7月23日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、現在の市場についての最大の心配事、市場が二分されている理由について話している。


現在がいつもと異なると思われる理由は単純に、昨年経験したような実験をかつて経験していない点だ。・・・
誰も、どう元に戻るかほとんど知らない。

ダモダラン教授がBloombergで、現在の市場・経済環境の特異性について語った。
パンデミックによる人為的な経済停止、異例の金融・財政政策、そして経済活動の再開。
人々は2つの力の間の緊張を経験したという: 力強い経済回復と、それが後押しするインフレ再来だ。

その緊張関係にも最近少し変化が訪れたとダモダラン教授は言う。
デルタ変異種の拡大やいくつかの経済指標での期待外れにより、力強い経済回復の賞味期限が心配され始めた。
一方で、インフレ再来への懸念は依然として存在しているといい、教授は、実質成長とインフレの戦いが今年中継続すると予想する。

「私は、インフレと戦わなければならなかった1980年代初めの記憶があるほど年取っている。
そのためにどれだけの苦痛を生み出したかも記憶している。
インフレ(昂進)が実現しないことを祈っている。」

年寄りが抱くインフレへの恐怖は若い世代には理解しにくい。
若い世代の記憶の中では、インフレは望むべきものとされてきた。
しかし、かつてインフレが明確に忌むべきものとされた時代も存在した。
(むしろ、20年ほど前までは、そちらがノーマルな考えだった。)
インフレが忌むべきものとされた時代、インフレは高くなりすぎたらすぐに政策で抑制できるなどという生易しいものではなかったのだ。

ダモダラン教授は、インフレ昂進の投資へのインプリケーションを語っている。

私はインフレが株式にとって良いことはないと考えている。
正直な話、高インフレのシナリオが株式によく働くとは考えない。

ダモダラン教授は、インフレが起こっても企業は売価に転嫁でき、結果、株価・配当はインフレ分増加するといった安易な議論を否定する。
自身の実証研究によれば、「予期せぬインフレ」は株式に悪影響を及ぼすという。

だから、インフレ回帰と株式の継続的上昇のシナリオは私には考えられない。
だから、株式が横ばいか上昇するには、インフレ懸念が解消しないといけない。
短期的にそれが起こるとは考えにくく、心配している。
それが市場に関する私の最大の心配事だ。

市場の強気派が常に口にするのが、株式と債券の相対価格の議論だ。
金利が低下し債券価格が高水準になると、株価も高くならざるをえない、というものだ。
この議論は静的モデルとしては正しいだろう。
しかし、実際には市場は静的ではない。
「予期せぬインフレ」は予期されなかったがゆえに、企業が消化(売価への転嫁等)できるとは限らない。
消化しきれない場合、フィクストインカムは元利確定だが、株式はダウンサイドが顕在化してしまう。

ダモダラン教授は、中央銀行の能力が過信されており、張子の虎のような能力の源泉が今危うい状態にあるという。

「私はFRB議長をオズの魔法使いと呼んでいる。
基本的に力を持たないが、力を持っているという(みんなの)認識が力を与えている。
各国中央銀行はとても危険なゲームを演じている。
インフレを制御可能であるかのようにふるまっている。」

市場参加者が、中央銀行は市場・経済を誘導する力を有している、と思い込んでいる。
だから、中央銀行の発言・行動が自己実現的に効果を発揮する。
今、多くの中央銀行が、インフレを制御できるというふうに振舞っている。
しかし、これが事実でない事例が出てくれば、魔法使いは魔法を失ってしまう。

ダモダラン教授は、中央銀行の魔法を信じるか否かで市場が大きく二分されていると話す。

ある人たち、特に若い人たち、私にとっては50歳はまだ若い人たちだが、一度もインフレの経験がない。
彼らはFRBが望めばインフレを低く抑えられると考えているが、私はFRBにその力はあるとは思わない。・・・
用心しないといけない。

多くの高名な老人がインフレを恐れている。
それでいて彼らは、実現しないことを祈る、とも言い添える。
それだけに投資家は、いつもより分散投資が求められているのだろう。


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