投資

グッゲンハイム スコット・マイナード 景気後退を回避した代償:グッゲンハイム
2019年12月28日

グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が、米債券市場が織り込む非対称なリスクを解説している。


「FRBは景気後退を回避し景気拡大を延長することに成功した。
製造業での弱さは底を打ち、消費者は良い状態、労働市場は例にないほど活況だ。
米国の回復はまた、世界の経済活動の改善にも寄与している。」

マイナード氏が「2019年第4四半期フィクスト・インカム見通し」で、今年のFRB金融政策を振り返った。
FRBは今年3度にわたり計75 bpの「保険的利下げ」を行い、市場の下落・心理の悪化を食い止めた。
もちろんこれだけを見れば「すべて良いニュース」だとマイナード氏は認める。
しかし、同時に同氏は、1998年の保険的利下げの帰結を思い出すとも書いている。

FRBの金融緩和は景気拡大を支える助けになった。
しかし、それはまた莫大な不良投資と過剰を株式市場に生み出した。
1998年のFRBのサイクル中期の調整は、流動性が牽引する回復をもたらし、最終的にバブルが破裂するまでの1年間でNASDAQ指数を倍に押し上げた。

ベテランを中心に、現在と1998年頃の類似性に言及する人がますます増えている。
利下げしてもインフレにならないため「保険的利下げ」を多用したところ、最後にはバブルになってしまったという物語の期間だ。
本来ならブレーキを踏むはずのインフレがイノベーション等の理由で起こらない。
結果、中央銀行は安心して金融緩和のアクセルを踏み、最後にはインフレではなくバブル崩壊というペナルティを受ける。
バブル崩壊後の金融政策といえば、当然ながら金融引き締めではなく金融緩和である。
投資の世界に過剰が発生しやすくなる。

過剰が増えれば、リスクが上下で非対称になっていく。
マイナード氏は、信用スプレッドを例に、非対称なリスクを説明する。

スプレッド 過去最少との差 過去最大との差
投資適格債 96 23 514
ハイイールド債 322 105 1,626

将来が過去とある程度似たものになると前提できるなら、信用スプレッドは圧倒的に拡大する可能性の方が高いことになる。
このリスクの非対称性から明らかなように、リターンの分布も大きく偏っている。

仮に、強力な強気相場がスプレッドを過去最小までタイトにすると仮定する場合、米国債に対する超過リターンは(6.3%のクーポン所得とスプレッドのリターンを入れ)約9%になる。
これに対し、スプレッドが過去最大までワイドになる弱気相場シナリオでは、超過リターンは(クーポン所得とスプレッドのリターンを入れ)約-43.8%になる。
繰り返すと、市場最小のスプレッドでのアップサイドが9.0%、最大でのダウンサイドが-43.8%だ。

この試算では格下げの発生を勘案していないようだ。
現実に弱気相場シナリオが実現するようなら、もう少し厳しい計算になるのだろう。
債券王ジェフリー・ガンドラック氏が言っていたが「債券とはゆっくり儲かり、あっという間に損する」ものなのだ。

マイナード氏は、現在の状況が「ミンスキー・モーメントの前」の特徴を備えていると指摘する。
ミンスキー・モーメントとは、サイクル終期に訪れる突然の資産価格暴落の時点のこと。
景気拡大期、金融市場ではリスク資産への投機、無茶な信用供与が増えていく。
これが、いつか終わりを迎え、次に市場の不安定が訪れる。
今は、ミンスキー・モーメントの前の、いわば《最後のひと上げ》であるとの指摘だ。

この局面はどれだけ続くのか。
ジョン・メイナード・ケインズの有名な言葉: 市場は、人々が破産しないでいられる期間より長く不合理を維持できる。
したがって、FRBが景気拡大を延長する間、現実にはリスク資産の愚かな季節も始まる。

マイナード氏は「愚かな季節」で得られるリターンとミンスキー・モーメント後のロスを天秤にかけるよう諭す。
仮に短期的リターンを獲り逃すとしても、長期リターンを最大化し資産保全に努めるべきと自社の役割を語っている。


-投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 その他利用規約をご覧ください。