景気後退に対する「保険」を呈示しろ:J・ブラッドフォード・デロング

カリフォルニア大学バークレー校のJ・ブラッドフォード・デロング教授が、FRBに「景気後退に対する保険」を模索するよう促している。
他の中央銀行に比べればましな状況にあるFRBだが、それでも政策の自由度は限られたものになっているためだ。


「したがって、先を見据えた時の大きなリスクとはインフレが上昇スパイラルに入り、FRBが経済安定に十分なペースで利上げできなくなることではない。
大きなリスクとはむしろ、今後1年で北大西洋諸国が景気後退入りし、政府が十分な財政刺激を与えることができず、FRBが十分に利下げすることができず、経済安定化の試みが放置されるに近い状況になることだ。」

デロング教授がProject Syndicateで書いている。
確かに足元の米経済はインフレ昂進を心配する局面ではなくなりつつある。
インフレを心配する局面とは景気が過熱したり、通貨の信認が失われる局面などであり、足元の米国がこれに該当するとは考えにくい。
一方で、数年中の景気後退の到来が心配されている。
もしも心配が正しいなら、インフレ昂進を心配すべきは、その景気後退の後の景気拡大期以降と考える方が説得力がある。
したがって、目下のより大きな心配事は景気後退であり、さらに景気後退への打つ手が限られている点になる。

この状況において、デロング教授は、FRBが3つの選択肢を有していると指摘する。


  • 利上げを進め、景気後退期の利下げ余地を作っておく。
    現実にはFRBは利上げを停止中。
  • 利下げして現在の景気を支える。
    もしも成功すれば、あらためて引き締めに転じられる。
    もしも失敗すれば、景気後退期にやれることがなくなる。
  • 政策金利を据え置き、景気後退期の有効な対処法を呈示する。

デロング教授はリーマン危機後の米経済回復に向けた政策の経緯を回顧する。
政治が党派間の争いに明け暮れ、有効な財政刺激策を講じられない中、FRBが孤軍奮闘を迫られた経緯だ。

前回の景気後退期、FRBは非伝統的金融政策を駆使してそれなりの景気拡大を引き出した。
しかし、次回はそれほど容易ではないかもしれない。
政策金利の水準はまだ正常化からは程遠い。
FRBのバランスシートも歴史的に見て拡大したままだ。
前回3回も必要としたQEは、すでに効果がかなり低減している可能性もある。
次の景気後退期にQEを再開したからと言って、前回ほどの効果が発揮されるかどうか心もとない。

デロング教授は、次回のための有効な対処法を呈示することを3つ目の選択肢として挙げている。
しかし、現状はそうした対処法が存在するのかどうかが心配されている段階だ。
FRBがいかに優れた組織だからと言って、そう簡単に解が見いだされるようなものでもないだろう。
一部の人が心配するように、次の景気後退は厳しいものになるのかもしれない。

この3つ目の選択肢はFRBの積極的な知的・意思疎通の努力が必要とされ、現状それを示すものはない。
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FRBが近々何か景気後退時に保険となるものを手に入れない限り、米国と世界は後にはるかに大きな問題に直面しそうだ。


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