景気と為替の棲み分けルール:早川英男氏

日本銀行元理事の早川英男氏が、今月の日銀の金融政策決定会合の落としどころを「ゼロ回答」と予想している。


勝てる自信があれば別だが、自信はないだろうし、負けたら目も当てられない。
今月の会合はゼロ回答。

早川氏がBloombergに対し、今月の金融政策決定会合でのマイナス金利深堀りの可能性について語った。
ここでの「負けたら」とは、日銀の政策の出尽くし感から為替が円高に振れる可能性のことのようだ。
記事では、政府と日銀の興味深い棲み分けについて書かれている。

早川氏は、政府と日銀の間では景気対策は財政政策、一方で為替対策は金融政策と水面下ですみ分けができていると指摘したうえで、現状の為替相場では『日銀の出番はない』とした。

日本経済のワンダーランドはここまで来たのか。
本来なら為替は政府、景気は中央銀行が建前のはず。
それがひっくり返っている。
邪道、きれいな言葉で言えば、詭道を続けた挙句、鏡の国が常態になってしまったのだろう。

早川氏は、もう1つ日銀のマイナス金利深掘りが難しい理由を挙げている。
長い金融緩和で厳しい収益環境に置かれてきた銀行が、さらなる金融緩和でとうとう口座維持手数料徴収に踏み切る可能性がある点だ。
思えば、銀行の預金金利は長らくゼロ近傍に置かれてきた。
銀行にとっての売価である貸出金利が低下してきたのに、仕入れ値である預金金利は下げてこなかったのだ。
それを口座維持手数料として取ろうとするのは至極当然な話だろう。


しかし、これまで口座維持手数料のなかった銀行でそれを導入するのは、預金者にとっては大きな変化だろう。
これまでは預金金利がゼロ近くまで下がるだけだった。
しかし、これからは実質でマイナスになるかもしれないのだ。
ついに銀行の痛みが広く消費者に転嫁される時がやってくることになる。

早川氏は、口座維持手数料が一般化すれば

「国民から怨嗟(えんさ)の声が沸き起こる。
・・・政府・官邸も怒るだろう。」

と解説する。
金融抑圧の痛みが改めて幅広く感じられる機会となり、金融緩和のマイナスの部分が意識されるだろう。
預金者から債務者に所得を移転する金融緩和が長く続き、人々は半ば麻痺状態にある。
それが、口座維持手数料というイベントで再び思い起こされることになる。
つい最近までは物価上昇を切望していた政府だが、最近はそうでもないようだから、日銀の旗色は悪い。

日銀は万策尽きたのか。
そうでもないようだ。
早川氏は財政・金融政策の「協調姿勢を演出」する手法が残っているという。

「財政、金融政策の協調が重要というのが世界的論調で、財政との協調姿勢を示すことは対外的なアピールとしても有効だ。」

リップ・サービスにはコストはない。
やったふりをするのが目的なら「対外的なアピール」はとてもいい手法だ。
どのみち何をやっても大した効果がないことを国民は薄々感づいているのだから。


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