国内経済

早川英男氏:旬を過ぎた高圧経済論

お金は結局投機に流れる

投資の喚起は、別に生産性向上のためだけでなくても構わないはずという意見もあるだろう。
その通りだ。
しかし、そこではまさに流動性の罠が進行している。


「伝統的に長期金利の影響が大きいとされるのは建設投資などだ。
実際、マイナス金利導入後には空室率が上昇を続ける真っただ中で節税目的の貸家ブームが起きたが、これは潜在成長率の低下要因となったに違いない。」

一見、実体経済での投資に見えて、実は投機的動機によるものが増えてしまう。
出来上がった建築物の市場が供給過剰となれば、これは将来の成長率を低下させてしまう。
将来の需要を先食いしてしまったのである。

日銀の軟化

早川氏はこうした高圧経済のリスクを述べつつも、冒頭述べたように「日本銀行の物言いが変わってきた」点は評価している。

「今は『単に物価を上昇させること』は目標ではないとして、よりバランスの取れた経済を重視するようになった。」

ややほめ過ぎの感は拭えないが、「『単に物価を上昇させること』は目標ではない」とは何を指すのか。
今年9月の黒田総裁の講演から復習しよう。

「日本銀行の金融政策運営において目指しているのは、単に『物価を上昇させること』ではありません。
消費者物価の前年比上昇率でみて2%という『物価の安定』が実現するもとで、人々の所得もしっかりと増加するという好循環が働く経済を目指しています。」

確かに、2%物価目標を堅持しながらも、好循環の経済を目指していると明言している。
こうした視野の拡大は、最近の黒田総裁のリバーサル・レートへの言及とも共通している。

他の道が見つからない

ただし、諸手を挙げて喜べない部分もある。
黒田総裁は続いてこう述べたのだ。

「過去のデータをみると、消費者物価の上昇率と賃金の上昇率は概ねパラレルに動いています。
米国や1980年代の日本では、物価が上昇するなか、総じてこれを上回るペースで名目賃金も上昇しています。
春闘などの賃金交渉の場において、現実の物価の動きが交渉材料となることを踏まえれば、こうした物価と賃金の関係は素直に理解できます。
また、こうした経済環境のもとでは、通常、名目金利も上昇します。」

空白の四半世紀をもたらしたバブル。
そのバブルを生んだ1980年代を引き合いに出さざるをえないところに日本の苦しさがある。
もちろん、当時と今では日本経済のモメンタム自体が大きく異なっている。
また、多くの人がフィリップス曲線による議論には無理があると感じている。


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