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日欧はほぼ何もない:ケネス・ロゴフ
2020年2月10日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、次の景気後退期に起こることに心配を寄せている。


紙の上では良く見える。
貨幣曲線をシフトさせ、IS曲線をシフトさせるという具合にすべてうまく行く。
しかし、財政政策とはとても政治的なもので、タイミングよく打てるものではない。

ニューケインジアンにして元IMFチーフ・エコノミストがCNBCで、財政政策の現実を語っている。
高名なニューケインジアンの1人と数えられている教授が、財政政策の可能性を信じていないはずがない。
実際、ロゴフ教授は「財政政策は機能する」と言っている。
しかし、それは机上の空論の中での話だ。
現実の経済・社会の中で空論ほどに機能するとは限らない。

財政政策によって需要を刺激することができる。
しかし、それで臨床外科的に景気サイクルと戦うのは極めて難しい。

ロゴフ教授は、米政治の分断を挙げ、両党が財政政策で協調するのがいかに難しいか指摘する。
欧州などの二の舞になる可能性が高いと予想する。

ロゴフ教授は、多くの国・地域で金融政策の余地が小さくなっている点を心配する。

「現代の中央銀行は、ケインズ以来で最も偉大なイノベーションの1つだが、不幸にも現在座礁中だ。
FRBはいくらか弾薬を残しているが、友人のベン・バーナンキが考えるほど多いとは思わない。
日欧はほぼ何もない。」

やれることがないから、各国中央銀行は小声でアピールしているという。

「『やれることは多くない。
財政当局にやってもらおう。』」

政治家は財政政策を実行しようとするだろうと、ロゴフ教授は予想する。
しかし、それが政治的に通るかどうかはわからない。
通ったとしても、タイムリーに行えるかわからない。

ロゴフ教授は、財政に関する先鋭な分断を指摘する。

ある人たちは政府を最大限に大きくしろと言い、他の人は可能な限り減税しろという。
私はこれが長期的な解になるとは思えない。

伝統的には大きな政府を求める声と小さな政府を求める声は相いれないはずだった。
ロゴフ教授も、そういう意図でこれらの考えを並べたのだろう。
ところが、不思議なことに、最近ではこの2つの考えを共存させるような考えさえ生まれている。
もしも、そんなところで合意がとれてしまえば、財政は発散への道を歩き始めかねない。
短期的には景気にプラスなのかもしれないが、それでいいという話ではないだろう。

ロゴフ教授は、次の景気後退期のことを心配する。
機動的に動ける中央銀行には弾薬が残っておらず、余力を残す政治は分断されている。
近年のように、金融政策が財政政策の分まで背負うことができるかとの問いに、ロゴフ教授は根本的な問題点を指摘している。

「各国中央銀行が行ってきた代替的な金融政策手段は、ある種の極めて低級な財政政策だ。
少しは効果があるが、たいした効果はない。
政府 海軍の軍艦に比べれば、中央銀行はとても小さなボートにすぎないからだ。」

ここで「代替的な金融政策手段」と名指しされたのは主に量的緩和のことだろう。
(米国ではマイナス金利政策は行われなかったし、マイナス金利政策は伝統的政策の延長かもしれない。)
量的緩和とは政府と中央銀行が国債と政府預金を交換するにすぎず、これ自体に効果があるわけではない。
(もちろん、資産買入れによる金利変化、心理に及ぼす影響などはある。)
本当に効果が発揮されるのは、政府が政府預金を取り崩して支出した場合だ。
財政に負担をかけるべきかの議論を別とすれば、財政政策の効果はやはり大きい。

ロゴフ教授は、次の景気後退期に起こるであろうことを端的に予想している。

それでも中央銀行は少しそれをやり、財政政策が機能するのを祈ることになろう。
中央銀行が金融政策を修復するまでは、景気サイクルのボラティリティは高まるだろう。

「景気サイクルのボラティリティは高まる」とは、言うまでもなく、下がる時にはとことん下がる危険があるという意味だろう。
ロゴフ教授の予想を信じるべきか迷うところだが、少なくともリスク・シナリオに入れておくべき話なのだろう。
金融政策の正常化の道筋が全く立たない今、そのシナリオは長く悲惨なものになろうが、それは同時にツワモノの事業家・投資家にとっては大きなチャンスなのかもしれない。


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