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日本株を買い、米長期金利上昇へ:スタンリー・ドラッケンミラー
2019年12月21日

スタンリー・ドラッケンミラー氏のBloombergインタビュー第2弾: 株式と債券の戦略と金融政策について語っている。


銀行、金融を保有し、日本株を保有している。
これを私は『評価したミックス』、『バリュー中心のミックス』とは呼ばないが、より通常のミックスになっている。

ドラッケンミラー氏がBloombergで、買いと話した株式の中身について明かしている。
同氏はこの1年での重点セクターの変化を振り返る。
1年前の米市場は大荒れだった。
当時ドラッケンミラー氏も「低い名目成長の世界」を想定していたため、それを跳ね返しうるグロース(特にクラウド関連)に重点を置いていたという。
結果、経済は堅調、市場は好調と、想定が的中したとは言えないが、とにかくグロースは上昇した。
今年の想定は昨年とは異なる。
「世界の名目成長が上昇する」ことを想定しており、投資先も景気敏感セクターまで幅を広げたようだ。
金利上昇の恩恵を受けやすい金融、世界の経済成長の恩恵を受けやすい日本株というロジックなのだろう。

ドラッケンミラー氏は債券投資についても前提を大きく変更している。
同氏は足元でフィクスト・インカムをショートしている。
つまり、金利上昇を予想しているのだ。

ドラッケンミラー氏は、昨年米国債を大量にロングした1つの理由を話す。

「昨年の今頃FRBは利上げしようとしていて、追ってジェローム・パウエルも『量的引き締め、バランスシート縮小は自動操縦』と言った。
・・・私は不適切だと思った。」

ドラッケンミラー氏は、FRBが金融政策の修正を余儀なくされると見て、米国債をロング(≒金利低下を予想)したのだ。
ところが、現在は「真逆の理由でほぼ真逆の見方をしている」とし、近時のFRBの金融緩和を不適切と斬り捨てた。
パウエル議長には来年利上げする勇気はないと見切る一方、金融緩和もしないと予想しているという。
では、ドラッケンミラー氏が考える適切な金利水準とはどのあたりなのか。

現在の名目・実質の成長率、失業率、その他すべての状況を勘案すれば、(FF)金利を1.5%とするのは愚かなことだ。
もしも私が火星から帰ってきて、幅広い状況を説明された後、FF金利のありかを尋ねられば、私は3.5%あたりと推測するだろう。

3.5%と言えば、市場に大混乱をもたらすような水準だ。
ドラッケンミラー氏も、そうなっていいと考えているわけではない。
これはあくまで、最近まで火星にいて、現在の市場環境にうとい人の考えを予想したものだ。
それでも同氏がこうした高い水準を口にするのには、経験に基づく理由があるようだ。
それは、FRB高官も公言する1990年代終わりとの類似性と相違である。

「FRBが1990年代半ばから終わりにかけての『保険的利下げ』に言及し続けていることからも明らかだ。
ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを運用していた1998年、クレジット(市場)はロシア(危機)で完全に干上がった。
そして、アジア金融危機が米国に波及する可能性があった。
グリーンスパンは3回(10月に2回、11月に1回)利下げした。」

外的要因の悪影響を回避するための利下げだった。
グリーンスパン議長(当時)の目的意識は明確だった。
だから、当初の目的が達成できたと考えた時、次に行うべき行動も明確だった。

「株式市場は最高値を付け上げ始めた。
グリーンスパンはアジア金融危機に保険をかけたかったのだから、(達成後は)保険を外そうとした。
彼は3度の利下げで5.5%から4.75%とした後、利上げを始めた。」

ドラッケンミラー氏は、この点において、当時のFRBと現在のFRBではスタンスが変化していると指摘する。
今年3回、同じ計0.75%の保険的利上げにおいても、その目的には貿易戦争やBrexitなど外的要因の悪影響を回避することが挙げられてきた。
しかし、今やそれは主たる要因ではないようなのだ。
ドラッケンミラー氏は、外的要因が解消したら利上げするかと記者に問われた時の、パウエル議長の回答を紹介した。

「『もちろん利上げしない。・・・
現在インフレ率はとても低く、デフレに戻るリスクはとらない。』」

ドラッケンミラー氏は、グリーンスパン議長の保険的利下げとパウエル議長の保険的利下げの違いを示す数字を紹介する。

グリーンスパンが4.75%から利上げを再開した1998-99年のコアPCEインフレ率は1.5%だった。
今では1.7%で(FF金利は)1.5%だ。

昔を知らない人の中には、当時はまだデフレ・リスクが大きくなかったと思う人もいるだろう。
しかし、それは的を射ていないかもしれない。
デフレの一因とされる技術革新が急速に進んだのは、まさに1990年代だ。
当時は《IT革命》ともてはやされていた。
今とは異なり、企業にはたくさん人がいて人海戦術で仕事をしていた時代だから、なおさらデフレ的になりやすかったとも言える。
IT革命が現実のものだったからこそ、2000年のITバブル、ドットコム・バブルが大きくなったのであろう。

実際、アラン・グリーンスパン議長は1990年代のインフレなき景気拡大について何度も回想している。
フィリップス曲線が成立しない、つまり失業率が下がってもインフレが上がらないことは今始まったことではないと言っている。

もしかしたら、私たちは幾度かのバブル崩壊の際にささやかれるデフレ・リスクというナラティブに過度に反応しているのかもしれない。
デフレは良いことではないし回避すべきだが、どの程度の状況でどの程度恐れるべきかは議論があってしかるべきだろう。
1.7%のインフレ率は1.5%のFF金利を必要とするほどのデフレ・リスクを示しているのだろうか。

ドラッケンミラー氏は従前から、デフレが金融政策の産物であると指摘している。
深刻なデフレの前には資産バブルの崩壊があり、それを生んだのが金融緩和であるという。
この考え方が正しいなら、デフレと戦うと公言する各国中央銀行は、デフレとの闘いの結果、デフレを生み出していることになる。

ドラッケンミラー氏は、FRBに疑問符をつける。

私は率直にFRBが理解できない。
昨年1か月間クレジットの発行がなく、株式市場が10%下落、経済環境はメルトダウンしている中で、FRBは利上げし、量的引き締めを自動操縦と言っていた。
今、クレジット環境はブームを迎え、IPOがあり、毎日株式市場が史上最高値を試し、失業率は3.5%、信頼感は上昇し、3度の利下げをしたばかりだ。
彼らは本当に理解しがたい。


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