ブラックストーンのジョー・ザイドル氏が、今後の米金融政策を予想し、それに基づく投資のヒントをいくつか挙げている。
(ワクチンの)承認・配布の時期は現時点では未知数なので、政策決定者は脆弱な経済政策を支えるために適切な財政・金融政策のバランスを取ることが重要だ。
財政政策が適切に支えないとなれば、FRBはさらにハト派的になるかもしれない。
ザイドル氏が自社ブログで、今後の米政府・中央銀行の政策対応についてコメントした。
選挙前に予想されたブルーウェイブ(民主党による大統領・議会多数派の総獲り)が起こらなかったため、財政政策の規模は予想より小さくなる可能性が高くなった。
その分、経済刺激効果が下振れするなら、それを金融政策強化で補わざるをえなくなる可能性もあるというのだ。
しかし、ザイドル氏によれば、現在重要なのは貸出ではなく財政支出だという。
FRBのこれまでの拡張的政策により金利は下がり流動性は満ち溢れ、負債・株式の発行はすでに史上最高を記録しているからだ。
「問題は不十分な信用ではなく、需要だ。
高齢化が進み投資が弱い経済では、ゼロ金利は需要を増幅できない。
欧州・日本がそれを示している。」
ここで1つ注意すべきなのは、ザイドル氏の米国経済に対する見方がコンセンサスより弱気に寄っているということだろう。
米市場でのコンセンサスは、時期はどうあれウィルスが克服されていくにしたがい、経済が力強く立ち直り、そこそこのインフレになるというものだ。
足元はデフレ的であるのが問題なのに対し、来年以降は徐々にインフレ的なのが懸念になっていく。
言い換えると、足元は需要不足、来年以降は供給制約が問題になるというものだ。
これに対し、ザイドル氏の書きぶりは、経済回復まで長い時間がかかる、言い換えれば趨勢的停滞、日本化が長く続くというもののようだ。
だから、FRBの(緩和方向の)役割はむしろ重くなっていくと考えているのだ。
同氏は、この変化が2つの意図せざる結果をもたらすと指摘する。
- 断絶した強気相場:
「低金利と量的緩和(QE)は前回の経済サイクルにおいて需要増大や投資という点ではあまり効果がなかった。・・・
インフレも一貫してアンダーシュートした。
しかし、実体経済を持ち上げるのに失敗した流動性も、金融資産をリフレするのには成功した。」 - 利回りのとれない世界に:
「パウエルFRB議長は、金融政策のリスクは『非対称的』と言っている。
やりすぎるより少なすぎる方が経済にとってより危険だ、と。」
だから、FRBは追加緩和に積極的になり、利回りはさらに消えていく。
ザイドル氏が暗示したとおり、FRBは伝統的に金融安定に対するコミットが小さい。
デュアル・マンデートに直接的には含まれていないし、政府の責任との考えなのだろう。
もしもこうした傾向が続くならば、雇用の回復が満足できない間、FRBが金融政策をふかすと予想するのも自然なことだ。
そして、ゼロ金利の世界では、従来、債券が与えてきたポートフォリオのヘッジ効果も大きく減退する。
ザイドル氏は、この変化が「伝統的な(株式)60:(債券)40ポートフォリオ」への圧力をさらに強めると予想する。
今後資産配分において役割を増す資産クラスとして次を挙げた。
- 私募の不動産(工業、トランクルーム、生命科学)
- 私募のクレジット(テクノロジー、ソフトウェア、物流)
- オルタナティブ
その上で、今後「テーマ性と高い確信」のある投資が成功を収めるだろうとアドバイスしている。
つまり、S&P 500指数など、市場全体を買う投資が振るわなくなっていくといいたいのだろう。