海外経済 投資

日本化するならインフレにならない:モハメド・エラリアン
2020年4月29日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、コロナ後の米国にインフレが起こらない1つの可能性について説明している。


経済が生産性を下げ債務を増やした場合、経済がインフレ上昇傾向を示すのは疑いようがない。
私が断定的に答えない理由は、この危機の後にどれだけ消費者がリスク回避的になるかわからないからだ。

エラリアン氏がFinanz und Wirtschaftで、財政出動がインフレを生むと言い切れない理由を明かしている。

コロナ・ショックでは、財・サービスの生産にストップがかかっている。
つまり、供給ショックが起こり、財・サービスの供給量は減っている。
(極端な例はマスクなど衛生製品で見られる。)
ところが、現在は同時に需要ショックも起こっている。
人々が財・サービスの購入を減らしている。
だから、一部不均衡(マスクなど)を除いてインフレが起こらない。

問題は、ロックダウンが解け、人々が買物を再開したらどうなるのか。
みんなが以前のように買物をするなら、しばらく需要超過となるかもしれない。
危機対応として行われた金融・財政政策が奏功するなら、いっそう需要超過となるかもしれない。
これが、多くの人が心配するインフレのシナリオだ。

エラリアン氏は、こうしたシナリオについて確信していない。
常々ロバート・シラー教授が言及する質素ナラティブのような現象が起こりうると考えているのだ。

大恐慌を経験した世代が示したような質素さが再来するとの見方がある。
その世代は、支出について慎重さを増した。
これは日本が経験してきた問題だ。

エラリアン氏は、一方で、米市民が買物をしたくてウズウズしている面もあると認めている。
この両面を見ながら、インフレについて態度を明確にできずにいるようだ。

エラリアン氏が、市場のコンセンサスと大きく乖離しているのはインフレの見通しだけではない。
株式市場の見通しについても、コンセンサスに比べて大きく弱気側に振れていた。
これはコロナ・ショック初期には大当たりだったが、3月下旬に大底を打ったあたりからやや分が悪くなっていった。

エラリアン氏は、米市場が大底を打ったのかと尋ねられると、わからない、誰にもわからない、と答えている。
ただ、現株価水準については高いと感じているようだ。

ばかげた数字を紹介しよう。
現在のPERは2月高値のPERと同水準なんだ。

エラリアン氏は、市場が抱く理不尽な楽観を指摘する。
経済がV字回復すれば儲かり、V字回復しなくても儲かるというものだ。
V字回復しない場合もFRBが株式を買い入れてくれると市場は考えているのだという。
エラリアン氏がモラル・ハザード・トレードと呼ぶ戦略だ。
FRBは投資適格債やハイイールド債の一部の買入れを決めた。
株式まであと少しなのだ。

私はそういう賭けはしたくない。
でも、他の人がそういう賭けをすることはわかる。
彼らは中央銀行(の助け)に賭けるよう条件付けされている。
これまで極めてうまくいった戦略なんだ。

市場が本当にFRBによる株式買入れを期待しているのかどうかは疑問符が残る。
しかし、もしも本当に市場がそれを織り込み始めれば、FRBは難しい状況に追い込まれる。
異様なまでに市場環境を気にするFRBにとって、市場期待を裏切り市場を混乱に陥れることはできない。
FRBとは、市場が期待すればその通りに動いてくれるニュー・ケインジアンを体現する経済主体だ。
市場期待を裏切る場合は、引き締め側でなく緩和側でなければならなかった。
この連続を断ち切れない以上、将来あるのは株高と暴落の繰り返しになるのだろう。


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