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日本円も保有すべきでない。借金すべき:レイ・ダリオ
2022年1月6日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、新著『Principles for Dealing with the Changing World Order』のエッセンス(結論を含む)を自身のSNSで公表してしまうという、珍しいことをしている。


プリンシプルズ』発刊の時も同時に無料でPDFを配っていた。
(実は発刊前の版はかなり前からPDFで無料配布されていた。)
ダリオ氏の目的は本を売ることではなく、自身の考えを伝えることにあるのだ。
このSNS記事では端的に新著のテーマが要約されている。

パラダイムは通常10年前後続き、時としてその中で大きな修正が起こる。
パラダイムは持続的な一連の条件によって引き起こされ、条件は極端からもう一方の極端の間を行き来する。・・・
例えば、狂騒の1920年代の次には不況の1930年代があり、インフレの1970年代の次にはデフレ的な1980年代があった。・・・
例えば、1920年代には株を持ち債券を避けるべきだったし、不況の1930年代には逆だった。
インフレの1970年代には金のようなハード資産を持ち債券を避けるべきだったし、デフレ的な1980年代には金融資産を持ちハード資産を避けるべきだった。

政治や経済が振り子のように振れ続けるとの見方はそう珍しいものではない。
リーマン危機後からパンデミックまでは、どちらかといえば間違いなく不況+デフレ的なパラダイムだったろう。
ダリオ氏も、現在が1930-45年や1970-80年頃に似た面があると書いている。
だから、今度は狂騒+インフレが予想される番だ。
これは、最近のブリッジウォーター幹部の見方とも一致する。
もしも今後がインフレ的パラダイムなら、債券を避け、ハード資産や株を持つべきということになる。

投資家としての結論を急ぐ前に、新著のテーマが経済・投資だけでない点に注意したい。
ダリオ氏のこれまでの発言どおり、テーマは経済・政治・社会・国際関係に及ぶ。
これらの振り子が逆に振れ始めるという大きな予想なのだ。

新たなパラダイムでは富と力が大きくシフトすることになる。

この大きな変化の中で、どういう投資戦略を採るべきか。
ダリオ氏はいくつかヒントを与えている。

米ドル・ユーロ・円建ての現金・債券の保有を最小化し(あるいはそれら通貨で借金をし)、株式・インフレヘッジ資産を含む高度に分散された資産ポートフォリオに資金を投じることを検討すべきだ。
特に、健全財政で教育水準が高く秩序ある市民を有する国々ではそうだ。

日本の財政はお世辞にも健全とは言えないが、教育水準はまずまず、秩序もかなり良い。
ダリオ氏の言を真に受けるなら、円で借金して株やインフレヘッジを買えということになる。
アリのような日本人にはなかなか勇気のいる話だが、唯一限定的なリスクで実行可能なのは、借家暮らしの人が借金をして持家を買うことだろうか。
泡を吹いていない住宅を買い、固定金利で借り、これまでの支払家賃分で借金を返済するというなら理想的だ。
予想通りインフレ的な状況が続くなら、家の価値は上がり、借金の価値は下がり、家計のエクイティは拡大していく。
でも、日本人はやはり予想が外れるのが心配だ。
特に1990年代の記憶がある人は・・・

ダリオ氏は、米政府・FRBの今後を見透かしている。

もちろん数年のうちには、たとえば中央銀行による金融引き締めなど、修正もあるだろう。
しかし、許容できるリスク度合いの、良く分散された、現金でないポートフォリオより、現金のリターンの方が良くなるような状況を政府が持続的期間許容するとは考えていない。
そうすれば悲惨な問題を生み出すことになるからだ。

インフレが何もしなくても自律的に収束するというなら話は別だが、もしそうならずに国民がインフレについて文句を言う場合、金融・財政政策を引き締めざるをえない。
しかし、これは経済・市場に大きな問題を引き起こす。
いずれもすでに長い間続いた低金利に慣れ切っており、それを前提として成り立つ部分が増えている。
これを巻き戻せば、まず資産価格が大きく低下し、さらに実体経済が後退に向かうだろう。
米政府・FRBはそれを許容できまいと、ダリオ氏は見透かしている。

これは日本にも言えること。
日本は米国以上にゼロ金利や通貨安政策に慣れ切っている。
官製のゼロ金利や通貨安というぬるま湯の中で、変革に身が入ってこなかった経済主体が多く存在するはずだ。
政策を巻き戻せば、これらが一掃されるのだろう。
それが筋と割り切るのが正論かもしれないが、よどんだ政治・権力がそれを許すとは考えにくい。
意図せざる引き金でもない限り、ぬるま湯は続く。
当面、ぬるま湯をメインシナリオ、意図せざる引き金をリスクシナリオとせざるをえない。

ダリオ氏は、投資家へのいつものアドバイスを繰り返している。

  1. 米ドル・ユーロ・円建てのクレジット資産、特に短期債務資産は著しくマイナスの実質リターンであり、保有することは望ましくない。
  2. 通貨・国・資産クラスについて良く分散されたポートフォリオを保有することが望ましい。

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