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日本のようにゾンビ化してはいけない:モハメド・エラリアン

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、日本を反面教師に、企業・市場のゾンビ化を心配している。


ゾンビ企業は日本で見られてきた現象だ。
つまり、金利を極めて低く保ちなんとしても市場を開き続けることを含む金融抑圧の副作用として、生き続けてはいけない企業を生きながらえさせることだ。
これは意図せぬ結果であり、経済の生産性とダイナミズムを奪ってしまう。

エラリアン氏がInvestopediaインタビューで語った一言が、日本経済の凋落ぶりを象徴している。

かつて日本経済は世界一輝く星だった。
戦後の壊滅的な状況から奇跡の復興を遂げた日本経済を世界中が注目した。
米国を含む世界中が、何か習うべきことはないかと日本を研究した。
将来あるエコノミストやバンカーは、そのキャリアの一部を東京で過ごすことが多かった。
それが出世の近道でもあった。
東京市場はエキゾチックではあったが、やはり重要な市場だったのだ。
ところが、1990年代から日本への関心は急速に萎んでいく。
世界の視線も韓国の財閥や中国の勃興に向かっていく。
この日本の凋落に一役買ったのは、政策による支援に甘えてきた日本産業なのかもしれない。

エラリアン氏は、米国の企業や市場がゾンビ化を始めるのではないかと心配する。
不況などで厳しい状況が訪れても、政府・中央銀行が企業や市場参加者を救済してしまう。
本来あってしかるべき新陳代謝さえ行われなくなってしまうかもしれない。

ゾンビ市場では、投資判断・資本配分はあまりファンダメンタルズによらなくなり、公共セクターの支援やFRBプットの強度などによるようになる。

エラリアン氏はとりわけ、FRBによるハイイールド債の一部の買入れについて批判的だ。
買入れ対象のハイイールド債への拡大は、株式への拡大を連想させる。
これにより市場はゾンビ化し「ウィン・ウィンの株式市場投資」という概念が生まれたのだという。

大きく回復する方に賭けて、正しければ儲かる(ウィン)。
もし間違っていても儲かる(ウィン)。
FRBが株式を買い入れざるをえなくなるからだ。

日本株の投資家が日銀のETF買いをねだり見込むようなものだ。
つまり、日本市場はかなり前からゾンビ化しているということだろう。
もっとも、株式投資家の中には能天気にゾンビ化を喜ぶ人もいるのかもしれない。

エラリアン氏はゾンビ化の弊害を2つ挙げている。

  • 価格発見機能の喪失: 市場が資本を効果的に配分する能力が浸食される。
  • 企業の規律の低下: 市場が企業経営に規律を与える能力が弱まる。

中央銀行が株価を押し上げれば、投資家は目先は儲かるのだろう。
しかし、長い目で見れば、経済全体・個々の企業のパフォーマンスが悪化し、長期投資に資さない市場になってしまいかねない。
政治家も官僚も中央銀行も近視眼的な投資家も、その点に触れることなく、自分の足元ばかりを心配しているのではないか。

エラリアン氏は、米市場のゾンビ化を真剣に心配している。

この全く意図的な大規模な介入が続くなら、ゾンビ市場に向かって大きな一歩を踏み出すリスクがある。・・・
私たちは2008年の世界金融危機での過ちを繰り返してはいけない。
世界不況に勝つことはできたが、かわりに、高く持続可能で包括的な経済成長を失った。


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