日本の「危機」はチャンスか:ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ氏の日本外国特派員協会での会見から1つだけ新鮮な響きのある部分を紹介しよう。
それは同氏が「危機」と表現する対象である。


この本は簡単な算数に基づいている。・・・
日に日に(日本の)債務は積み上がっていく。
そこから引かれるのは、日に日に減っていく日本の人口だ。
事業を営むコストは上昇している。・・・
中央銀行は紙幣を刷って、日本株や円債を買い入れている。

ロジャーズ氏が特派員協会で、日本の抱える問題について語った。
人口が減るなかで債務が増える。
これを増税で切り抜けようとすれば、企業等のコストが上昇しジリ貧になりかねない。
だから、歳出を削減し、減税を行うべきとの意見だ。

現在の日本の債務水準を考えれば、これが日本の債務問題の解決とはなりえないことはロジャーズ氏も理解しているのだろう。
ここでは単に、非常にシンプルに同氏が考える国のあり方を述べたものと思われる。
人口が減るなら、政府もそれに見合うだけ身を小さくすべきという考えは(中身の議論はあろうが)当然のことだ。
政府が身を小さくしないのなら、国境を開いてもっと多くの人々を受け入れるべきという論理につながっていく。

いずれにせよ、ロジャーズ氏は日本が危機を迎えていると考えている。
日本株についても本人はすでに売却済みと公言している。
ここで思い出したい言葉がある。
「危機」という言葉だ。
ロジャーズ氏は、今回の講演でも農業分野への期待を語る時「Kiki」という言葉を用いている。
この言葉は同氏が中国の聴衆に向かって話す時にも多用する言葉だ。


「日本語には『危機』という言葉があるだろう。
中国語の『危机』(Wéijī)という言葉と同様、不幸とチャンスは一体という意味だ。」

危機の《危》は危険、不幸という意味。
危機の《機》は機会、チャンスという意味。
要は《塞翁が馬》のような教訓だ。
農業は今が不幸だから、将来チャンスになると言いたいのだ。
逆張り投資家らしい考えである。

ここから自然と湧いてくる疑問があるはずだ。
不幸な日本はチャンスにはならないのか。
同様に不幸なはずの米国の通貨をロジャーズ氏は大量に保有している。

「私は米ドルを大量に保有しているが、それは歴史的理由からだ。
一たびドル高になったら、その後何が起こるか予想しているから、資産を米国からも退避させる。」

ロジャーズ氏のドル持ちの理由は、危機時に条件反射のようにドルが買われる傾向があるためにすぎない。
そのドル高でしっかり稼いだ後で、さらに次の居場所を探そうというわけだ。
以前からドルの次は金と断言しており、この日も金に言及していた。
ただし、最近の金価格上昇もあってか、以前ほどの断言は聞かれなかった。
では、日本はどうなのか。

(お金を)どこに置いておけばいいのかと聞きたいのだろう。
おそらくまず起こるだろうことについていくつかアイデアはある。
しかし、事態が悪化し始めた時に私のお金を置いておくべきところに日本は入っていない。

ロジャーズ氏は、米国発・日本発・欧州発等々の危機を予想しているのだろう。
長期的にそれに賛成する人でも、中期的なホライズンでそれを予想する人は終末論者らまだ少数派だ。
現状、多数派は中期的にはまだ来ないと考えている。
そういう前提に立つ人たちは、リスク・オフの通貨を円と主張する人が多い。


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