ハワード・マークス
 

新興国市場投資の条件:ハワード・マークス

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、FRBの利下げを理屈立てて批判している。
一方、現在のバリュー投資のチャンスは新興国市場だという。


「100年の間、中央銀行の仕事とはインフレを制御することだった。
それが30-40年前、雇用を創出するために経済成長を支持することが新たな仕事に加わった。
しかし、新たな景気後退を防止するという考えは、これら2つのいずれのものでもない。」

マークス氏がCNBCで、FRBの金融緩和政策に疑問を呈した。
同氏の思い描くFRBの刺激策とは、長い目でも見て景気拡大・雇用拡大を実現することだ。
毎年毎年景気拡大を続けさせることではない。

マークス氏には他にもFRBに不満がある。
FRBが市場に「迎合している」ように見える点だ。
市場が少しくしゃみしただけで緩和策を講じるFRBプットが常態化している。

「雇用を創出したいのは良い。
たぶん景気後退を防止したいのだろう。
私は永遠にできるとは考えていないが。
しかし、株式市場が下落しているからという理由で利下げすべきなのか。
私は完全に間違っていると思う。」

もう1つの疑問は、経済が良好な中で利下げをすべきかという点だ。
米経済は10年を超える史上最長の景気拡大を続けている。
マークス氏は、製造業に不安要素があるものの、今後も消費が牽引するだろうと予想している。

「米経済は世界の主要経済の中で最良の状態だ。
・・・現時点で刺激策は必要でない。」

さらに、大統領選を意識しつつ、FRBが大統領のプレッシャーを受けている点を心配する。

「FRBの目標が今年・来年に景気後退を起こさないことなら1回の利下げもいいのかもしれないが、それがゴールかは疑問だ。」

温厚な言葉を選びながらも、マークス氏の意見は金融緩和に相当に反対なのだ。
同氏は、政策にはメリット・デメリットがともなうとし、足元での金融緩和のデメリットを1つ挙げている。

「1つの問題は、もちろん、仮に今50 bp利下げし、誰かがもう50 bp下げさせようとして成功し、その後にまた50 bp下げさせたとすると(FF金利は)75 bpまで下がる。
景気後退が来たらどうするんだ。
・・・イエレンが利上げを進めた1つの理由はこれだと考えていた。」


マークス氏からすれば、景気も市場も、下がらないようにするのではなく、長い目で見て上昇していく健全な環境が必要なのだ。

米経済が景気後退に向かっているのかとの問いに対しては、マークス氏は、経済とは常に景気後退に向かっているものと答えている。
未来永劫、景気後退がなくならない限り、必ず景気後退はやってくるからだ。
マークス氏は景気後退を占う上で最も重要な点を雇用とする一方、市場を騒がせているイールド・カーブの長短逆転にはあまり興味がないと話している。

「誰も、それが影響を及ぼすものと説明できないからだ。
ほとんどの景気後退の前に逆転があったと言うことはできる。
これは、ほとんどの逆転の後に景気後退が起こったというのとは違う。」

では、景気後退はいつ頃と予想されるのか。
マークス氏は予想者ではないとして、予想を述べるのを控えた。

「景気後退が差し迫っているようには見えない。
あと5年ないとも思えない。
だから、2年先とかかもしれないが、数字は言えない。」

サイクル終期の投資戦略について尋ねられると、マークス氏は、最近の金価格上昇について徹底的に現実的な解説を与えている。
金に根源的価値を見出すのは不可能と述べている。

「資産価格とはその資産の人気を示すものだ。
私は、今年金価格が上昇したのは人気のためと考えている。
そして、金が不確実性の高い時期にいいというアイデアと結びつけた人たちがいたんだ。」

安全資産説や金利低下説を退け、単に人気が上がったためとの解釈である。
徹底的なバリュー投資流の考え方と言えるかもしれない。
根源的価値を見出さない以上、マークス氏にとって人気で金を買うという話にはならないのだろう。

金が選択肢でないなら、どこにバリューが存在するのか。
マークス氏は逆張り投資家らしく、目下の不人気を理由に新興国市場を選好していると話した。
ただし、それにも注釈がついている。

クレジット、不動産などほとんどの戦略では、今日、用心深い限りにおいて、そこそこ投資可能だ。
わが社のモットーは『前へ、しかし用心深く進め』だ。
『用心深く』という部分がとても重要な部分になる。


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