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新興国市場の運命を決める3つの金利上昇:IMF

IMFのフィリップ・エングラー氏らが、米国をはじめとする先進国の金利上昇が新興国市場に及ぼす影響について解説している。


新興市場国と発展途上国は、こうした金利上昇を不安な思いで見守っている。
こうした国々の多くは先進国よりワクチン入手に時間がかかり、また独自の財政刺激策を実施する余地が限られていることから、先進国より景気回復には時間がかかる見通しだ。

エングラー氏らがIMFのブログで、新興国市場や途上国が先進国における金利上昇について心配していると伝えている。
米金利が上昇して動揺しているのは米市場だけではない。
幅広く世界の市場に影響が及んでおり、すでに、新興国市場への資金流入が減っている。
ブログ記事によれば、2013年のテイパータントラムの再来が危惧されているという。

金融環境が緩和的である時、先進国から新興国市場へ資金が流入しやすい。
景気は改善方向で、金利が安いために新興国市場の調達コストも比較的低くなる。
リスク・オンが起こり、先進国から新興国市場へ資金が移動しやすくなる。
(これが一国内の現象なら、まさに金融緩和の目的通りのことが起こっているともいえる。
現実には、これが一国内だけでなく国境を超えて起こっている。)

ところが、先進国側で金融が引き締まるとこれが巻き戻す。
ドル金利上昇は新興国市場のドル債務にも逆風となる。
先進国の投資家は資金を引き揚げようとして、テイパータントラム時のようなことが起こる。
年初の米金利上昇は、この再来を髣髴とさせたわけだ。

先進国と新興国の間でこうした資金フローが反転を続けるのは今始まったことではない。
ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授は以前から、このパターンが新興国市場経済を翻弄してきたと指摘。
背景に、主に先進国による利己的な金融政策があるとした。
もっとも、金融政策とは本来利己的な目的で行われるものだから、新興国市場への配慮が足りないという話なのだろう。

この悪いパターンが今回も実現してしまうのか。
IMFは、米金利上昇の「原因」によるとし、3つの「原因」を挙げている。

  • 先進国経済にとって好ましいニュース
    平均的な新興国市場経済にとって害がない。
    新興国市場に資金が流入し、スプレッドは縮小し、輸出が増加する。
  • 米インフレに関するニュース
    通常無害。
    過去のインフレにはデマンド・プルとコスト・プッシュの両方があったため、悪くばかり取られるわけではない。
    ただし、それが次の項目に発展すれば話は違ってくる。
  • 金融引き締め、その見通し
    悪影響が及ぶ可能性が出てくる。
    「『金融政策サプライズ』によってアメリカの金利が1%ポイント上昇するごとに、平均的な新興市場国の長期金利が即座に3分の1%ポイント上昇することが明らかになった。
    信用格付けが低く『投機的』とされる国では、3分の2%ポイントの上昇につながっていた。」

わかりやすい分析だが、結論は多くの投資家にとって既知のものだ。
つまり、米金融政策が帰趨を決めるということ。
過去繰り返してきたことが今回も繰り返される可能性が高い。
唯一大きく異なるのは、今のところFRBの金融引き締めが相当先のものになると思われることだ。
そして、IMFも含めて、世間とは(正しいかどうかを棚上げして)金融引き締めを忌み嫌うものなのだ。


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