ウォーレン・バフェット氏が、自身のトレードマークともいえる新聞事業を売却した。
バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが新聞事業をリー・エンタープライズに1.4億ドル(約150億円)の現金対価で売却した。
買い手のプレス・リリースにより明らかになった。
バークシャーはリーに対し5.76億ドルのローン(25年、9%)を実行し、リーはその一部を買収の対価に充てる。
残りはリーの残債のリファイナンスに充て、バークシャーはリーへの唯一の貸し手となる。
当該事業の支配権はリーに移るが、金融面ではバークシャーがかなりの影響力を持つとことになる。
リーと当該事業の関係は深い。
2018年7月からリーはバークシャーと運用委託契約を結び、当該事業の運用にあたってきた。
事業面ではすでに1年半前からリーが主体になっていたわけだ。
今回はそれが自己資本面にまで及ぶ。
バークシャーは今後長い時間かけて、リーに対する金融面での支配力も薄めていくことになろう。
当該事業の修正EBITDAは0.474億ドルだった。
買収対価は修正EBITDAの3倍弱と、かなり低く見える。
もっとも、バークシャーは利率9%の超長期ローンの方でしっかり儲けるのだろう。
リーがうまくいけば、バークシャーは(米国債に対する)スプレッド7%を手にする。
リーの経営が難しくなれば、債権者としてリーの経営権を獲りにいくこともできる。
(ただし、業績に関するコベナントはついていない。)
バフェット氏はコメントの中で、リーとの40年以上にわたる関係を強調し、売却先として最善である点をアピールしている。
バークシャーA株の時価総額は5,500億ドル超。
かつて、バフェット氏のトレードマークとされた新聞事業の売却対価はその0.025%にすぎない。
バークシャーは巨大投資会社に成長する中で、大きく変化してきたのだ。
新聞事業といえば、自然独占が働きやすい、バフェット流投資のお手本として度々紹介される分野だった。
しかし、それもデジタル化の波には逆らえず、地域ごとの独占・寡占が意味をなさない構造に変化していた。
一度買ったら買ったっきりというバフェット流投資も、破壊的技術の前に屈することがあるのだろう。