資産運用の世界最大手ブラックロックが、2021年の世界見通しを公表しているが、そのタイトルが「新たな投資の秩序」とされている。
「私たちは新たな投資の秩序に突入した。
コロナウィルスのパンデミックは、経済・社会が4つの軸についてどう機能するか、深いシフトを加速させた:
持続可能性、格差、地政学、そして共同マクロ政策の革命だ。
私たちはこれが投資ポートフォリオについて根本的な再考を迫っていると信じている。」
ブラックロック投資研究所が7日、自社サイトで来年の見通しを公表している。
言及されている「共同マクロ政策の革命」とは、協調的財政・金融政策を指すものだろう。
同社の書きぶりからは、投資運用の枠組みが変わるとの切迫感が感じられる。
レポートでは来年の投資テーマが3つ上がっている。
- 「ニュー・ノミナル」: コロナ後インフレが上昇しても名目金利は低く据え置かれる。
- グローバル化の巻き戻し: 効率を犠牲にしても安全なサプライチェーンが優先される。
- 構造変化の加速: サステナビリティ重視、格差拡大、Eコマース拡大(実店舗没落)。
さらに、この3テーマの長期・短期投資に対するインプリケーションを挙げている。
- ニュー・ノミナル →
- 長期投資: 国債をアンダーウェイト。株は実質金利低下に支えられる。
- 短期投資: 低金利はリスクテイクに有利。米国株・ハイイールドを選好。
- グローバル化の巻き戻し →
- 長期投資: 国別分散。ベンチマーク以上の中国エクスポージャー。
- 短期投資: 新興国市場、特に日本以外のアジアの株式を選好。日欧をアンダーウェイト。
- 構造変化の加速 →
- 長期投資: 持続可能性の高い資産を選好。
- 短期投資: 片方がテクノロジーとヘルスケア、もう片方が厳選した循環銘柄で構成するバーベル・アプローチ。
しかし、これだけでは、このレポートの持つ切迫感が伝わらないかもしれない。
レポートでは「ニュー・ノミナル」の意味合いを説明している。
「『ニュー・ノミナル』とは単に今後5年間の高いインフレ期待に関するものではない。
それは、短期的に経済成長が強まり、債券の名目利回りの典型的な上昇がなく、最終的にインフレが上昇するということを意味している。・・・
以前のインフレ上昇の例では、投資家が高い付けを払わされた。
金利上昇につながり、割引率の上昇を通して多くの資産クラスでバリュエーションが圧迫された。」
過去の金融政策のレジームでは、インフレが程よい水準から上振れすると、金融引き締めが行われてきた。
インフレ上昇を回避することに高い優先順位が置かれ、金融引き締めの結果、経済・市場が冷えることも多かった。
これが景気・市場のサイクルを生み出してきた。
その状況に変化がみられる。
FRBはインフレが目標を越えても金融緩和を続けると宣言している。
これがしばしサイクルを取り払ってしまうかもしれない。
政策革命が意味するのは、今日の水準からのインフレの上昇が、過去の例と比べて、リスク資産に有利に働く可能性が高いということだ。