新たなスローガンの流行と米国債:ロバート・シラー

ロバート・シラー教授が、米政治における新たなスローガンの流行を心配した。
Modern Monetary Theoryがそれであり、これが米財政の持続性に不安をもたらすと示唆した。


またこの時代の新しいスローガンになるのだろう。
一部の人にとって政治的に役に立つためだ。

シラー教授がYahoo Financeで、奇説が流行ることを心配した。
その奇説とは、借金を返さなくてもいいというものだ。

「パウエル議長が(議会証言で)受けた質問にModern Monetary Theory(MMT)についてのものがあって、これは最近出てきたスローガンだ。
もしも大衆が望むなら、政府はどこまでも財政赤字を無限に続けられるというものだと推測する。」

シラー教授はMMTについてもちろん理解している。
にもかかわらず「と推測する」と付したのは、この奇説をまじめに取り上げたくないとの思いだろう。
ここで言うMMTとは、不換紙幣を発行し自国通貨建ての債務により財政を運営している国家は債務をデフォルトすることはないというメッセージだ。
国家は債務返済に不換紙幣を充てることができ、不換紙幣の発行に制限はないため、こうした主張がなされる。
こうしたシナリオはまったくありえなくはないだろうが、債務がデフォルトにされなくても、代わりに悲惨な痛みが走ると考えるべきだ。
にもかかわらず、米議会においてもこうした奇説が流行の兆しを見せているのだ。
背景には、とにかくお金を使いたい国会議員の存在がある。

「経済はすでに財政赤字による財政政策によって刺激されている。
これが心配だ。」

金融政策も財政政策も将来の需要の先食いという性格を持つ。
刺激策で得られる高い成長率を維持したければ、刺激策もエスカレートさせなければならない。
もしもそれができなければ次の谷も深くなる。


シラー教授が触れたパウエル議長の議会証言で、議長はMMTについて真剣に検証したことはないと前置きをした。
しかし、その後の答は毅然としたものだったから、内容を知らなかったわけではない。
シラー教授と同様、まじめに取り合うのを嫌がったのだろう。
パウエル議長の答はこうだ。

「自国通貨建てで借入れをする国家にとって債務が問題ではないとする考えは、単なる誤りだと考えている。
米債務対GDP比率はかなり高水準にあり、さらに重大なのはGDPよりかなり急速に上昇している。
プライマリー・バランスから程遠い。」

パウエル議長はMMTのメッセージを「単なる誤り」と切って捨てた。
さらに、どこかの国で流行っている金融政策・財政政策の協調という考えにも、FRBが財政従属に自ら陥る可能性を否定した。

「人々がそれにFRBを使おうという点については、FRBの役割は特定の政策を支えることではなく、これは世界中の中央銀行に言えることだ。
・・・歳出の決定、歳出と返済のコントロールは議会の役割だ。」

常識人パウエル議長は筋を通したのである。

シラー教授はこうした一連の現象に対して、気になるコメントをしている。

パウエルFRB議長も高水準にある国家債務が少し問題であることに同意するのではないか。
その一方で、大統領は国家間の敵対的態度を生み出している。
米国は無リスク投資の格好の場所だったし、今後もそうあることを願っている。
4%の失業率の中での財政赤字で、これについに何か変化が起こるだろう。

天才的な経済学者の脳裏を読み取るのは難しい。
4つの行についてシラー教授が言いたかったところを推測しよう。

(1行目)米債務が拡大しており、この消化には外国投資家の買いが必要。
(2行目)債務者である米国は憎まれ始めている。
(3行目)これまでは米国は好かれていた。
(4行目)国内政策によって財政インフレまで心配される。

さて、こうしたメッセージが示唆する変化とは何だろう。


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