ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、流動性相場の進展度合いを金融・財政政策に沿って説明している。
私は6月初めまでにマネーサプライM1が25%増加したと指摘した。
それが横ばいになった。
次に、より幅広いマネー総量M2の上昇率が鈍化を始めた。
つまり、大きな増大は終わったんだ。
シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、マネーサプライの急拡大が一服したと語った。
米マネーサプライM1、M2
3月から増加傾向にあった米マネーサプライが落ち着きを取り戻しつつある。
3か月で25%のM1上昇は大きな変化だが、この要因は危機対応でのFRBによる資産買入れであろう。
シーゲル教授は、こうした流動性の急拡大を見て、流動性相場の継続・加速を予測してきた。
この根拠となった流動性の指標、M1・M2に安定化の兆しが見えている。
しかし、だから流動性の増勢が終わるわけではない。
もう1つの金融総量、財務省のFRBへの預け金を見てみると、1.3兆ドルに達している。
歴史上の水準の4倍多くなっている。
スティーブ・ムニューチン財務長官は『このお金を配るのを待っている』と言っている。
1.5兆ドルが財務省の口座から民間の口座に送られる。
FRBに預けられた政府預金
政府預金の増勢が続いているのは、真水の財政政策のために米政府が資金調達を進めているからだ。
政府が借りたお金がFRBに預けられ、これが出番を待っている。
1.5兆ドルとは、米GDPの7%超にあたる。
これが民間に配られる。
今年は選挙の年だから、さらに財政政策が打たれる可能性もある。
シーゲル教授は、巨大な財政資金があっという間に配られる状況をよく理解すべきと指摘する。
また、ジェローム・パウエルFRB議長の言葉を心に留めるべきという。
『利上げを考えることを考えもしていない。』
何年も引用されることになるだろう。
大局の中でこれは何を意味するのか?・・・
FRBは短期金利をとてもとても低く維持するだろう。
雇用は株式市場のようにすぐには回復しない。
長い長い時間をかけて回復していくものだ。
つまり、よほどのインフレにならない限り、FRBは金融引き締めには転じられないだろう。
過去数十年の米国の景気後退のほとんどは金融引き締めが引き金を引いてきた。
今回そのブレーキはなかなかかからない。
コロナ・ショックによるファンダメンタルズ悪化は、例外を生み出すのだろうか。