政府はインフレを防げない:グリーンスパン

アラン・グリーンスパン元FRB議長が、財政悪化によるインフレ・経済低迷を心配している。
政治はこれを防ぐことができず、米経済はスタグフレーションに向かう可能性が高いという。


「いいや、真逆だ。
トレンドは逆方向に向かうはずだ。」

グリーンスパン氏はBloombergで、金利が低下に向かう可能性を尋ねられ即答した。
同氏は、財政悪化が米経済に大きな問題を引き起こしつつあるという。
その主因が社会保障負担の拡大だ。
グリーンスパン氏は、財源のともなわない社会保障が財政赤字を拡大させていると指摘し、それが社会を害する道筋を解説した。

「財政赤字はそれほど政治的力を生まない。
興味深いのは、それがインフレを生み、そして政治的反応が起こる。
だから、この問題を政治が解決する望みは薄く、インフレが来て始めて政治が向き合うようになる。」

まだインフレが来ないことをいいことに、放漫な財政が続けられる。
この方が政治家にとっても国民にとってもその刹那は都合がいいからだ。
ところが、その代償はいつかインフレとして国民生活に降りかかる。
グリーンスパン氏はそれが「必ず起こる」と断言する。

グリーンスパン氏は、社会保障負担は経済成長にも悪影響を及ぼしているという。

「米経済において社会保障の増大が国民総貯蓄を蝕むという長期的な傾向が見られる。
国民総貯蓄は経常収支調整後に国民総投資になる。
国民総投資こそ生産性向上の主要な変数だ。」


グリーンスパン氏は、当面の間、生産性を向上させる力はとても弱く、今後も続くだろうと予想する。
社会保障負担が貯蓄を減らしてしまう限り、米国は持続的成長が困難になると指摘した。
経済が低迷しインフレが起こるなら、米経済はスタグフレーションに向かっていることになる。
グリーンスパン氏自身「とても危険な見通し」と話している。

その他、政治・経済に関する通なコメントがいくつかあり、2点を紹介する。

フィリップス曲線
グリーンスパン氏によれば、フィリップス曲線はかつて間違った解釈をされていたという。
同氏は、この曲線は失業とインフレの関係ではないと言い切り、使用する時には関係式に生産性向上を入れ込まないといけないと説く。
「1990年代後半にFRB内で大きな議論があった。
データにすぐに表れなくても生産性が大きく上昇しているように見える状況に直面した。
もしもそうなら、インフレなしに失業率は4%未満に下がりうるというものだ。
そして、それが起こったんだ。」
こうした内幕を知っている人からすると、ディスインフレに首を捻る今の世代は進歩がない世代と映るのかもしれない。

ポピュリズム
グリーンスパン氏は、ポピュリズム台頭の原因を経済成長の鈍化だという。
ポピュリズムとは「共産主義・資本主義・社会主義のような哲学」ではなく「苦痛の叫び」なのだという。
「『けがをしたから助けてくれ』
と叫ぶと誰かがやってきて言う。
『私は解決法を知っている』
こうした人は歴史的に公職に就くのがうまいんだ。」

グリーンスパン氏は、ジェローム・パウエルFRB議長の仕事にとても安心しているとコメントした。
一方、米政治の現状には強い懸念を示した。

「私はほぼ20年米政府内にいたが、現在に少しでも似た状態を見たことがない。
経済見通しは、貧しい政治によって大きく影響を受けている。」


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