ブリッジウォーター・アソシエイツが3名の共同CIO名で経済・市場のアップデートを公表しているので、日本に関する部分を紹介しよう。
日本は(諸外国とは)全く異なるサイクルの局面にある。
パンデミック後のゆっくりとした再開と少なめの財政拡張策のため、日本における不均衡は他ほど過酷でない。
このため、日銀は金融緩和政策をより長く維持できている。
遅いというのが、海外のコンセンサスなのだろう。
某国の首相は何かと「スピード感」という言葉を用いるが、それは徐行を徹底という意味なのかもしれない。
ブリッジウォーターが言いたいのは、欧米に比べて日本はパンデミックの際の財政出動が大きくなかったために、インフレの度合いも比較的小さく済んだということだろう。
欧米のような高インフレなら金融緩和継続は中央銀行の使命からいっても、政治的力学からいってもありえなかったろう。
中途半端な高さだったために、日本らしい徐行が許されている。
とはいえ、実際のところ日本国民はかなりおかんむりだ。
最近では、物価目標以上のインフレが続いており、当局もゆっくりと異常な金融緩和を解除するよう対応している。
修正のペースが遅いため、持続不可能な金融緩和政策を典型的に指し示す市場行動が見られる。
これは長期金利主導の金利上昇と通貨安で特徴づけられる。
金融政策が極端にファンダメンタルズの要請を抑え込んでいる。
金利を抑え込めば(つまり国債の円価格を支えれば)代わりに円の価値が下がる形だ。
ブリッジウォーターの「持続不可能」という指摘は、無理に金融緩和を守ろうとすれば、長期金利に上昇圧力、円相場に下落圧力が加わり続けるという意味だろう。
このため、債券利回り上昇を加速させるような政策変更のスピードアップが求められるが、それは円の急騰を引き起こす可能性がある(円は歴史的にこの傾向がある)。
株式バリュエーションは、年の初めほどではないが、まだ魅力的だ。
過去を振り返れば、金融引き締めは米、欧、日の順に進むことが多い。
(これは自国通貨安を嫌わない順でもある。)
今回もその順になるとすれば、最後に日銀がいくらか金融政策を正常化し、そこでいくらか円高に戻すことになる。
(もちろん、円安に振れる前にまだ円高が進む可能性もある。)
せめてもの救いは、まだ日本株に妙味があると言ってくれている点だろう。