押し目買いの時代は終わった:モハメド・エラリアン

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米経済への自信を述べる一方で、米市場のリスクを指摘している。
押し目で自動的に買う時期は終わり、選択的な投資戦略をとるべきとして、3つのパターンを奨めている。


「昨年はこれがバランスしていたんだ。」

エラリアン氏がCNBCで、ある不均衡の発生を指摘した。
昨年は均衡していた2つのこととは、

  • ファンダメンタルズ: 特に欧州・アジアで弱かった。
  • 中央銀行への自信: 何かあればFRBが支えてくれる。

ところが、今ではこの両方が投資家にとって悪い方向に変化したという。
外国経済のファンダメンタルズはさらに悪化し、中央銀行への期待は弱まった。
さらに火に油を注いだのが米中貿易戦争だ。
エラリアン氏は、貿易戦争がさらにエスカレートする可能性に言及した。

貿易戦争のエスカレートは通貨戦争の確率を高める。

同氏は殊更に声のトーンを低め、こう語った。

エラリアン氏は、世界の経済成長の鈍化が米経済に与える影響についても聞かれている。

「この問題が複雑なのは、米経済成長と米市場とが異なるものであるためだ。
(世界経済の鈍化は)米国にとって逆風だが、米国を景気後退に陥れるほどの強さとは思わない。
・・・貿易に関係のないセクター、サービス・セクターもかなり大きく、消費者や労働市場も良好な状態だ。」

つまり、米経済は外的な逆風にも耐えられるとの見立てだ。
ところが、市場については少々話が異なってくる。
エラリアン氏は、市場が経済よりもはるかに外国経済にエクスポージャーがあると指摘する。
このため、同氏は米経済と米市場がデカップリングを始めると予想する。
(仮に景気後退に向かうなら、市場が先行して下落を始めるのは経験則でもある。)


最たるものは多国籍企業であろう。
外国経済が鈍化すれば、多国籍企業の業績に悪影響が及ぶのは当然だ。
あるいは、資本面での影響もあるかもしれない。
米国とは貯蓄不足の経済であり、外国資本なくして成り立たない。
外国経済が鈍化すれば外国資本の挙動にも変化が出るかもしれない。

エラリアン氏は、さらに経済・市場の心理面にも心配する。

市場から経済へのフィードバックのメカニズムを忘れてはいけない。
現時点では、自己実現的な期待が経済にとって危険な状態になっている。

みんなが経済悪化を心配すると、経済が本当に悪化しかねない。
ロバート・シラー教授は、7月のFRB利下げが人々の心理を悪化させたと心配している。
経済が取り立てて悪くない中での金融緩和に疑問を呈している。

経済は今のところ問題ないが、市場は外国経済に引きずられうる。
場合によっては、経済も市場に引きずられてしまうかもしれない。

エラリアン氏は、米市場が下げる可能性を認め、押し目で自動的に買うような戦略は見直しが必要と話した。
その上で、極めて選択的に行うことを前提に3つの投資戦略を提案している。

  • 混乱している分野(米国内より外国にチャンスがあるかもしれない)。
  • 特にクレジットにおいてサプライ・チェーンが途切れている分野。
  • 最近の上昇の中心ではないが、国内向け事業であるため貿易戦争からの影響が少ない分野。

機関投資家を含めた投資家に向けた通な推奨だ。
一般の投資家は選択的にクレジット商品に投資するのは難しい。
1つ目、3つ目を個別銘柄で取り組むぐらいしかないだろう。

エラリアン氏はポイントを端的に述べている。

スポットを決めて、市場の混乱に集中することだ。

悪い言い方をすれば《他人の不幸は蜜の味》ということだろうか。
《押し目ぐらいでは拾ってはいけない。大きな不幸を狙え》というように聞こえる。
もっとも、多くの投資家はすでに心得ているところだろう。


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