アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏の3日の発言: FRBの先回り、2匹目のどじょうを追う戦略の危うさを警告している。
その戦略で過小評価されているリスクは、信用リスクがFRBの許容範囲を超えてしまうことだ。
Bloombergである投資戦略の有効性を尋ねられ、エラリアン氏が答えた。
その戦略とは、FRBが新たに買い入れようとしている資産クラスに先回りするという戦略だ。
FRBはコロナ・ショックへの対応のため、上限のないQEの実施、買い入れ対象に投資適格債を加えるなどの政策を打ち出した。
こうした動きに先回りすることでリターンを稼ごうとのアイデアは、一足先に買い入れ対象を拡大した日銀の資産買い入れでも見られてきた。
エラリアン氏は、このアイデアには落とし穴があると指摘する。
「私が言いたいのは、投資適格の銘柄が格下げされてハイイールドになるということ。
・・・格付会社によってかつて見たことのない急速・大量の格下げが実施されている。
BBB格の企業がハイイールドになるリスクが極めて高い。」
エラリアン氏は、FRBにハイイールド市場を支えるつもりはないと読む。
本来FRBは《通貨の番人》だ。
自身の信用リスクを増やすことに躊躇するだろうとエラリアン氏は予想する。
それならば、FRBは格下げリスクの高いBBB格の買い入れにも慎重にならざるをえない。
米企業債務市場のリスクについては、以前から多くの市場関係者が指摘していた。
今回の市場混乱でそれは顕在化し、一時は市場の多くのセグメントで値がつかない、新規発行ができないなどの状態に陥っていた。
現在は少し落ち着きをとりもどしつつあるが、火種が消えたわけではない。
発行市場が一部回復したことで、駆け込みの新規発行が増えているとエラリアン氏は警戒する。
今後、企業収益が悪化せざるをえない中、市場が機能しているうち、収益の数字がまともなうちに発行しておこうと考えるのは自然なことだ。
こうした動きは、市場の信用リスクにプラスには働かないだろう。
エラリアン氏は、投資適格債の《2匹目のどじょう》を狙う投資家に警告する。
FRBがハイイールド債務や株式も買い入れるとの観測だ。
優先的な資産クラスで起こったことが資本構成の他の部分(を構成する資産クラス)にも敷衍できると考えるべきではない。