最近いろいろなところで株式リスクプレミアムという概念が聞かれるようになったので、少し解説したい。
とても基本的なことから。
まともなビジネススクールの基礎講座では資本資産価格モデル(CAPM)という理論を習う。
1960年代にウィリアム・シャープらが提唱した理論で、多くの伝統的な投資理論の基礎となっている。
(1990年、シャープはノーベル経済学賞を与えられている。)
CAPMは、資産の分散不可能なリスク(βリスク)から理論的な資本コストを計算する。
E(R) = Rf + β・ΔR
E(R): 資産の理論的な資本コスト
Rf: リスクフリー金利
ΔR: 市場リスクプレミアム
「市場」は広く取る方が分散効果が上がるため、株式市場だけに留まる理論ではない。
ただ、株式市場を扱っている人たちは、E(R)を株式市場の理論的な資本コスト、ΔRを株式リスクプレミアムと読み替えて用いている。
ここでβとは分散不可能なリスクであり、ざっくり言って《市場との連動性》と考えればよい。
CAPM式がいうのは
- βリスクのない資金調達でもリスクフリー金利分のコストがかかる
- βリスクが増えるほど株式リスクプレミアムとの掛け算でコストが増える
そして重要なのは、均衡状態においては、株式の資本コストと期待リターンが表裏一体のものであるということ。
CAPMの式は、資本コストの導出だけでなく、将来リターンの期待値をも導出しているのである。
では、株式リスクプレミアムが上昇することは株価にどのような影響を及ぼすだろうか。
- 上昇の途中: 資本コストが上昇するため株価下落要因となり、リターンが下がる。
- 上昇しきった状態: 下げが終わり、将来の期待リターンが高まった状態。
逆もしかりである。
今月に入ってFPではリスクプレミアムに触れた発言を2本紹介している。
- バイロン・ウィーン: リスクプレミアム拡大の可能性
- ビル・グロス: リスクプレミアムは史上最低に近い
みんな気にし始めているのだ。
なぜなら債券利回りが4-5%水準となっている。
リスクプレミアムとは債券と株式のリターン格差を決める重要な要因だ。
債券にすべきか、株式にすべきか、みんな考えているのだろう。
(日本人からすればうらやましい限り。
いや、日本人は迷う必要もないから幸運ととらえるべきだろうか。)
こうした関心の高まりを受けて、CNBCがアスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授に話を聞いている。
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