ハワード・マークス氏のBloombergインタビューからさらに多く公表されたので、興味深い点をいくつか紹介する。
インタビュワーのデービッド・ルーベンスタイン氏がマークス氏に尋ねた。
「米国がこの債務を返済する能力について心配しているか?
もしもできなければ、米国はドルを減価させるのか?」
さすがはルーベンスタイン氏。
めったにマクロ経済予想を語らないマークス氏に、カーライル共同創業者は最も重い質問を投げかけた。
マークス氏は答えた。
「明らかに心配だ。
米国のような国が破綻したことはなく、何が起こるかはわからない。」
何か破綻が決まった未来かのような答になっている。
続きも、先ゆきが心配になるような語り口だ。
「現在、米ドルはいわゆる世界の準備通貨であり、米国はそれを増発できる。
短期的には望むだけ増発できる。
そうである限りは、米国は破綻しない。」
マークス氏は、現在の米国を引き出し制限なしの当座預金口座を持っているようなものと解説している。
口座がマイナスでも引き出しできる限りは破綻はしないが、そうでなくなれば話は別ということだろう。
「デフォルトを交渉の材料に使うのはとてもとても危険なことだ。」
マークス氏は、米国がこれまで引き出し制限なしの口座を持ててきたのは、準備通貨の地位という打出の小槌を持っていたためと説明する。
デフォルトを交渉材料に使えば、その打出の小槌が失われかねないと警告する。
マークス氏は、投資の世界を目指す人へのメッセージを請われ、投資のスリリングな魅力を語っている。
「私が言うのは、投資が魅力的な分野だということ。
とても多く扱うべき変数があって、とても多く対処すべき不確実性がある。
刺激的であり、答はいつも変化する。
昨日の答は明日には役に立たなくなり、油断はできない。」
また、投資に向かない人の性格にも触れている。
多くの不確実性のある世界であり、どんなに優れたプロでも結果的に失敗を犯すことも多い。
偉大な投資家は60、70、80%で正しいのだろう。
あなたがいつも正しくなければいけないタイプの人なら、投資の世界にはいない方がいい。
必ずしも思い通りにならないことを覚悟できない人は向かないといいたいのだ。
かといってもちろん、いつも失敗する人も向かないのだろうが。
マークス氏は最後に、パーティでタダで投資のアドバイスを求められたら何とアドバイスするか、尋ねられている。
同氏は、投資のアドバイスを医者の診断に喩えている。
「どんな症状を手当てしたいのか。
必要なお金以上のお金を持っているのか否か。
長く生きるのか、短いのか。
扶養家族はいるのか、そのために何か必要か。
上げ下げのある人生を許容できるか。
できないなら、みじめになるから投資はすべきでない。
投資とは、個々人にとって適切なものにしなければならない。」
投資のアドバイスとは、運用業に就いているといやというほど求められる厄介な代物だ。
投資のあり方は投資家の属性によって大きく変わる。
オールマイティな答はない。
逆に言えば、多くの人に画一的なノウハウを売ろうとするような人がいれば、相当に用心すべきことなのだ。