オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、社会・経済に大きな変化が起こる可能性を指摘し、投資家は変化に対応しなければならないと説いている。
今日は1950-60年代とは異なり、すべてのことが毎日のように変化している。
今後数年で破壊者または破壊される側(または両方)にならない企業・産業というのは特に考えにくい。
今日の主要グロース企業のリストに載っているすべての会社が5-10年後も存在すると信じる人はみな、間違いに終わる確率がかなり大きい。
マークス氏が直近の「Memo」で、社会・経済に絶え間ない構造的変化が起こっている可能性を指摘している。
これが投資の世界に「新たな世界秩序」をもたらすという。
同氏はいくつか投資におこる変化を挙げている:
- 『安定』『ディフェンシブ』『堀』といった言葉の意味が小さくなる。
- テクノロジーの知識がより必要となる。
- 昨日と同様な明日が来るとの前提には精査が必要。
最後の変化は興味深い。
これは「This time is different.」(今回は違う)が正しくなる確率が大きくなることを意味する。
マークス氏はこの言葉を投資における最悪の4語と言ってきた。
一方で、この言葉を遺したジョン・テンプルトンが同時に「20%の場合は本当に違う」と語ったとも言い添えてきた。
どうやらこの20%がさらに大きくなるらしい。
投資に新秩序が訪れるとして、いったい何が起こるというのか。
マークス氏は多く列挙している。
- テクノロジー企業: 高収益。設備投資が少なく限界費用が小さい。教育の必要性。
- 雇用: 失業が増えるだろうが、一方で働き方にも変化。
- 政治: 分断。
- 世代間格差・不公平:
「ベビーブーマーはこれから、そして今も公平なパイの分け前より多くを消費している。
これは将来世代に、彼らが受ける恩恵に比例しない支出のための債務を背負わせることになる。」 - FRBの役割:
「(正常化は)経済にとって大きなマイナスか?
市場が再び反乱を起こしたら、市場の調整はFRBを低金利体制に引き戻すのか?
楽観論者がFRBの仕事と今考えているように、FRBは永遠に資産価格を押し上げ続けるだろうか?私には、FRBが中断なく経済・市場を押し上げ続けられるとの期待は、正しいには都合良すぎるように思える。
私は、長期的には経済が自由市場経済において最良のパフォーマンスを上げると信じ続けている。
自由市場経済こそ資源の最適用途への移動の最良のメカニズムだ。」「米国はまだ買い手からの信用を受け、低金利で債務を発行できている。
誰が主たる買い手かと言えば、米政府(FRB)だ。」 - 中国: 成長は続くか? 国際社会の一員としての「法・善行」を遵守するか?
- 財政拡大: 「Tワード」(xx兆ドル)の次は何か? 帰結は?
マークス氏は、これら変化が確実に起こるとも、どう変化するとも断言していない。
ただ、変化に対して過度に消極的になるべきでないと説いている。
これらの重要な変化が進行中であることから、現在の世界が異例に複雑で、世間がかつてのようならよかったのにと思いがちだ・・・
しかし、記憶ほどには過去は間違いなく心地よくなかったし、記憶よりもっと手ごわかった。
本当に変化が訪れようと、過去に頑張った自分たちなら乗り越えられるとのエールだろう。
どのような変化が起こるか定かではない。
いくつかはとても大きなインパクトのあるものだろう。
それでもこれまでのように頑張れば乗り切れる。
そうした思いなのだろう。
マークス氏は最後に書いている。
そのうちわかるさ。