オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏がMemo「失敗を減らすか成功を増やすか?」で、投資家が下すべき選択を説いている。
私が強く感じるのは、業界トップの成績を続けて長期的に優れた記録を上げようとしても続かないだろうということだ。
マークス氏が、投資において長期的な成功を成し遂げるための道筋について書いている。
トップを続けようとするより、平均以上の年を確実に積み上げていく方が現実味があるとした。
オークツリーでは「負け組銘柄を避けていけば、勝ち組銘柄に自然に当たる。」というらしい。
つまり、リスク・コントロール、この場合はリスクをうまく回避することを重んじたのだ。
ところが、オークツリーはこうしたアプローチだけに留まらなかったという。
ブルース・カーシュ氏が入社しデフォルトした資産に投資し始めると、リスク回避とは言えなくなった。
リスク/リターンの良い資産を拾い集めることで優れた成績を上げることができたという。
つまり、リスクをうまく回避するか、うまく取るかの2つの道があったわけだ。
マークス氏はこのMemoの中でチャールズ・エリス著『敗者のゲーム』に触れている。
投資家にとってもはやバイブルに近いこの本で、エリスは投資をテニスに喩え、「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う」と説いている。
プロはリスクをうまくとって儲けるゲーム、アマはミスを犯さないことで負けないようにするゲーム、というわけだ。
マークス氏と似た二分法が説かれている。
マークス氏はシカゴ大学出身。
言うまでもなく効率的期待仮説の本丸だ。
そのマークス氏が、アルファを獲得できる投資家が存在すると書いている。
「アルファを持つ投資家は市場に参入し、自身の能力を用い、下方リスクのすべてを取ることなく市場の上方ポテンシャルにアクセスすることができる。
・・・
もしもアルファが相応のリスクすべてを取ることなしにリターンを得る能力だとすれば、それを有する投資家は、リターンを少ししかあきらめずにリスクを低減するか、リスクを相応より少なく増やすだけで潜在的リターンを増やすか、によることになる。」
投資家がアルファを獲得したいなら、自身の特性に合わせ、リスクをうまく減らす道を選ぶか、うまく取る道を選ぶかを選択せざるをえないという。
つまり、負け組銘柄を除外するか、勝ち組銘柄を追求するかの選択だ。
マークス氏によれば、両方の特性を持つ人はほとんどいないという。
負け組を減らすか勝ち組を増やすか、2つのやり方を適切に選択するのは、個々の投資家の能力、リターンの欲求、リスク許容度による。
私の議論する多くのことと同様、正しい答はなく、ただ選択があるだけだ。