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アスワス・ダモダラン 投機家の利益がビットコインを蝕む:アスワス・ダモダラン
2021年2月1日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、通貨・コモディティ・収集品の定義・特徴を解説し、暗号資産の可能性について考察している。


ビットコインは資産ではない。・・・
ビットコインはコモディティではない。・・・
ビットコインは通貨・・・
ビットコインは収集品・・・

ダモダラン教授が通貨・コモディティ・収集品・暗号資産について書いた自身のブログで、ビットコインの本質について整理している。
ただし、これを理解するには教授によるやや厳密な定義・特徴を理解する必要がある。

  • 資産: 期待キャッシュフロー(契約上・残余財産・オプション等問わず、売却を除く)を持つもの。
  • コモディティ: 消費者が必要とする財・サービスの生産プロセスへの投入として価値を有するもの。
  • 通貨: 価値の尺度・交換の手段・価値の保蔵に資するもの。
  • 収集品: 好みや希少性に基づく価値があるとの考えから価格がついているもの。

ちなみに、ダモダラン教授は従前から価値と価格という言葉を厳密に分けて用いている。

  • 価値: キャッシュフローの水準・成長性・リスクで決まる。
  • 価格: 市場のムード/モメンタム・表面的な物語/噂・流動性で決まる。

ここまでの定義を理解した上で、ダモダラン教授によるビットコイン評価を読み直そう。

ビットコインは資産ではない

ビットコインを保有してもキャッシュフローを得られないから資産ではない、となる。
ただし、ビットコイン建て証券(保有するとビットコインのキャッシュフローを得られる証券)は資産。
教授の考えでは、ドルは資産ではないが、ドル建て証券は資産、と分類される。
この議論は定義だけの問題だろう。

ビットコインはコモディティではない

ビットコインは需要のある財・サービスの投入にはならないからコモディティではない、となる。

日本は税制上ビットコインをコモディティとしているが、ダモダラン教授の定義とは異なっている。
ちなみに、ビットコインはブロックチェーン技術への請求権ではないので、同技術を考慮しても判断は変わらない。

ビットコインは収集品だが、寿命に疑問符がつく

若い人にとっては一種の収集品となりうるという。
しかし、これにも2つ課題があるという。

  • 希少性: 他の暗号資産の存在が希少性の主張を難しくする。
  • 価格形成: 過去の価格によるところが大きいため、いったん大幅な下落を経験すれば人気が下火になりかねない。
    この点で、暗号資産の中ではビットコインは相対的に良い実績がある。

これらは丁寧な分析ではあるが、問題の中核ではなかろう。
ビットコインとは煎じ詰めれば電子メールやエクセル・ファイルと同じように電子データとそれを用いる情報システムにすぎない。
そこに(価格があるとしても)価値があるかどうかは、そのデータ・システムの中身次第だろう。
結局のところ問題の中核の1つは、長い目で見てビットコインが通貨たりえるかにあり、もう1つは短期で相場がどうなるかにある。

ビットコインは通貨だが(少なくとも今は)良い通貨ではない

ダモダラン教授は、ビットコインが始まって12年になるのに通貨としての普及が極めて限定的である点を指摘し、その理由を考察する。

  • 非効率: 取引にかかる時間・コストで「非効率」。
    皮肉にもこれはビットコイン初期の売りの1つだったはず。
  • ボラティリティ: 多きすぎて決済に使いづらい。
  • 発行上限: デフレ通貨であり、経済成長に資さない。
  • 犯罪用途: 犯罪用途で生き残るとの話は手入れを受けるリスクを抱え続けるということ。

中でもデフレ通貨である点は重要なのではないか。
仮にビットコインが決済手段としてカバーする経済を拡大していくなら、ある程度流通量を増やしていく必要がある。
さもないと、ビットコインがカバーする経済はデフレとなり、信用創造も進まず、その経済は停滞してしまう。
特に最近のような急激な上昇では、いわば恐慌が継続しているようなものだ。
大きなボラティリティと合わせて、これは通貨としては致命的なのだ。

思えば、急上昇が始まる前、ビットコインはもう少し決済手段として有望視されていた。
(時間やコストも段違いに小さかった。)
ビットコインが通貨として生きるには、少なくとも発行上限とボラティリティの問題を改善する必要がある。
しかし、ビットコイン投資家のほとんどはそれを望まない。
彼らが求めているのは価格上昇と値動きだからだ。

結局のところ、ビットコイン投資家は、すべてを薄々感づいた上でギャンブルを楽しんでいるのだ。
確かに、他のギャンブルや宝くじに比べて胴元によるピンハネも少ない。
すっかり値動きをやめてしまったFXに比べてはるかにスリリングだ。

ダモダラン教授はビットコインの課題を多く上げながらも、ビットコインが調整するかどうかはわからないという。
モメンタムによって価格が支えられており、それを弾けさせるきっかけが予見できないからだ。
長い経験から、価値は低くとも価格は高止まりしうることを心得ているのである。

この混乱は価格ボラティリティを維持し、ビットコインのトレーダーの利益になるだろう。
しかし、これは、安定性が求められるビットコインの通貨・収集品としての長期的可能性を蝕むものだ。


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