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思いもしなかったことが起こりつつある:モハメド・エラリアン
2021年5月20日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏は、最近の米国株の下げの背景にある心理を解説し、FRBの出遅れがもたらす珍しい可能性を指摘している。


もしもみんながFRBの政策変更を考えたなら、10年債が動いたはずだが、動いていない。
これは何か他のものだ。
市場は、FRBが後手に回るのを心配しているんだ。

エラリアン氏がCNBCで、近日の米市場の動揺について解説している。
同氏によれば、インフレ懸念がFRBの金融政策正常化観測につながっているとの解説は誤りだ。
もしもそうならば、同時に金利の上昇が見られるはずだが、米長期金利はこのところ実に安定している。

S&P 500指数(青、左)と米10年債利回り(赤、右)
S&P 500指数(青、左)と米10年債利回り(赤、右)

「もしもFRBが後手に回れば、FRBは急ブレーキを踏まざるをえなくなる。
今起こっているのは、みんなが神経質になっていることであって、FRBが動こうとしているのではない。・・・
他の中央銀行が方向転換し、人々が(インフレの)証拠を指摘する一方で、FRBが頑固にインフレを一過性とするマントラにしがみつくだろうことに神経質になっているんだ。」

エラリアン氏が最近主張しているのは、FRBが十分ゆっくりとした金融政策正常化を始めるべきということだ。
その第一段階が、先々のテイパリングを匂わせることだろうが、FRBは全体としてはこれにまだ後ろ向きだ。
エラリアン氏は、十分ゆっくりとした金融政策正常化なら市場の混乱も小さく留めることができると考えている。
一方、FRBが後手に回り、急ブレーキを踏まざるをえなくなれば、市場は混乱し、経済にも波及するだろう。

エラリアン氏は、米国債が安定し、株が売られているもう1つの要因についても説明している。

中央銀行が大きな輪転機を持ち毎月1,200億ドルの資産買入れを行っていなかったなら(みんな米国債を売っていたろう)。
買入れを行っている現在、FRBに挑戦すべきかといえば、Noだ。
だから、FRBが直接的に影響を及ぼしていない資産が売られている。

この解説は、強烈な金融緩和が続いた後に、その持続性が疑われる際に何が起こるか描写したものになっている。
買い入れる資産クラスへの影響力が保たれている場合でも、それ以外の資産クラスへの効果は剥落を始める。
それまで間接的に影響を受けていた市場が先に正常化、つまり価格下落を始める可能性がある。
ある意味、市場が中央銀行より先回りを始めるのだ。

FRBについていえば、先回りをしているのは市場だけではない。

「とても興味深いのは、FRBがECBより(引き締めで)出遅れると予想するとは思いもしなかったことだ。
FRBが検討さえ考えていない時に、ECBはテイパリング検討のシグナルを出し始めた。」

この驚きは、日本人なら共感できる人も多いはずだ。
日本の投資家にとって、景気後退後の金融引き締めが米、欧、日の順に進むのは常識だ。
このタイムラグのために景気回復期には円安となりやすく、それが度々日本株に恩恵をもたらしてきた。
その順序が、米・欧の間で逆転するかもしれない。

エラリアン氏はその原因について心配を募らせる。

欧州の成長がより良好なためかといえば、Noだ。
欧州の財政政策がより拡張的かといえば、Noで、米国の方が拡張的だ。
欧州の方がインフレが高いわけでもない。
欧州の方がリスクテイクが増えているわけでもない。
理由は、FRBの新たな金融政策の枠組みがFRB自らをコーナーに追い込み、脱出のしかたが見いだせないだけなんだ。

FRBの新たな枠組みの背景には政治・社会的要因があるのだろう。
それを解き明かすのも興味深いだろうが、投資家にとっての関心事は、米・欧の順序が入れ替わる場合に前例とどのように違うことが起こりうるかということだろう。


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