弱気相場の定義が20%下落である本当のワケ:ロバート・シラー

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、昨年のクリスマス・イブの市場心理について解説している。
S&P 500指数はその日まで下げ続け、翌日から反転している。


「弱気相場というラベルは、株式市場に対して危険なほどに非科学的な理解に基づいている。
それが危険なのは、その名称自体がネガティブなナラティブを生みかねず、それ自体がさらなる市場下落を助長しかねないからだ。」

シラー教授がThe New York Timesへの寄稿で書いている。
株式市場の「調整」、「弱気相場」という言葉は、その言葉自体が自己実現的な予言となりうると言うのだ。
教授は、昨年12月24日S&P 500がピークから19.8%下げたと指摘。
これが弱気相場と解釈されれば、それ自体によってさらなる下落が起こりかねなかったと心配した。

米市場で「調整」と言えばピークから10%、「弱気相場」と言えば同20%下げることというのが通常だ。
こうしたデファクトの定義について、シラー教授は疑問を投げかける。
教授の調査によれば、こうした定義が定着したのは高々1980年代半ばであり、まだ30年余りのことに過ぎないのだという。
それ以前は、もっとあいまいに「弱気相場」という言葉が使われていたのだ。


シラー教授は、なぜ20%なのか、その根拠を探っている。
20%で下げ止まることが多いのかと言えば、Noだという。
ただ、20%を超えると、みんながクマにまつわる自虐的なジョークで騒ぎ始めるのだという。

(最近2回の例では)弱気相場の始まりは何の意味もなさなかった。
歴史的に見れば、20%下落はどのような確度においてもその後の市場の動きを予言するものでないのは明らかだ。

それにもかかわらず、シラー教授は「弱気相場」騒ぎを見過ごすわけにはいかないという。

「単に弱気相場入りしたと話し、SNSの増幅器の中で主張を繰り返すことで、名称自体が心理的不安を生み出し、それが市場のボラティリティを高めるかもしれない。」

その意味で、昨年のクリスマス・イブは危うい状態だったのだという。
ただし、結果はよい方に動いた。
ここを押し目と見た買い方が優勢となり、S&P 500は上昇に転じたのだ。

ナラティブは株式市場において重要だ。
いろんな面で社会心理のバロメーターだ。
強気相場に歓喜しようが弱気相場から逃げ出そうが、変わりやすい感情が絡んでいる。
株式市場の次は、どちらがどちらを打ち負かすだろう。


 - 投資