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引退してはいけない3つの理由:FOX
2019年3月25日

FOX Business(Motley Fool発)が、引退を思いとどまるべき3つの理由を挙げている。
その中で、米国では一般的な「4%ルール」について言及されている。


「このルールは、1年目に貯蓄の4%を引き出し、次の年から引き出し額をインフレ分増やしていくと、貯蓄が30年続く可能性が高いというものだ。」

FOXによる4%ルールの説明だ。
これから引退しようという人が、引退後の財務計画を概算する時に使われる。
米国の平均寿命が80歳弱として、50歳で引退すると、少なくとも30年分近い貯蓄を用意する必要がある。
それを概算しようというわけだ。

例えば50歳引退時の貯蓄が500千ドル(約55百万円)だったとすると、初年度の生活費が20千ドル(2.2百万円)となる。
年2%のインフレが進むなら、翌年以降20.4千ドル、20.8千ドル・・・と生活費は上昇していくが、インフレ見合いなので購買力は変わらない。

一般のサラリーマンなら55百万円も持っていないという人も多いだろう。
しかし、日本の場合、米国よりましな年金制度がある。
年金で賄える分は貯蓄は少なくていい。
(年金制度が破綻しなければとの前提だが・・・)

ここで、米国における4%ルールの前提を逆算しておこう。
単純に、4%ずつ貯蓄を崩すという話なら25年分となるはずが、30年分となっている。
この差の5年分は運用によるものだ。
これを実現する運用リターンを求めてみる。
(わかりやすくするために実質ベースで計算する。)

4%ルールの検証
4%ルールの検証

4%で30年持たせるには実質1.4%のリターン(年率)が必要であることがわかる。
インフレを2%とするなら3.4%の名目リターンだ。
これは現在の米10年債では稼げない。
引退後にも株式などリスク資産への投資が必要となることを意味している。

足元の米長期金利を2.5%とすれば、リスク・プレミアムは1%弱だ。
仮に、米国株が3%程度のリスク・プレミアムを与えてくれると仮定すれば、貯蓄の1/3程度を米国株、残りを米長期国債に充てれば、全体として1%のリスク・プレミアムを期待できることになる。
可能ならば、引退後にリスク資産に投資するのは避けたいが、この程度なら許容しやすいだろう。

問題なのは、これが米国の話であるということだ。
日本の場合、長期の実質金利からして状況が大きく異なる。
日銀が超長期にわたって2%物価目標を掲げ続け、名目長期金利をゼロにペッグし続けたらどうなるだろう。

  • 日銀が成功すれば実質長期金利は-2%となり、1.4%の名目リターンのためには3.4%のリスク・プレミアムを稼がなければならない。
    これは、引退後の資産にレバレッジを掛けることを示唆する。
  • 日銀が失敗してインフレ1%、名目長期金利ゼロ%となったとする。
    実質長期金利は-1%となり、稼ぐべきリスク・プレミアムは2.4%。
    この数字でも引退後の資産の多くをリスク資産に投資することになる。

そもそも預金好きで株式投資に対するトレーニングができてない日本人の場合、4%ルールの応用は危険すぎる。
それでも、これは最悪のケースではない。
最悪のケースとはいつかインフレが昂進するケースであり、その際、機敏に金融引き締めできないようなことがあれば、貯蓄の購買力は急速に低下してしまう。
標準的な日本人は二者択一を迫られている。

  • 4%支出しなくて済むよう貯蓄の額を増やす
  • 一生働き続ける覚悟を持つ

いずれも決して明るい未来を指し示すものとは言えまい。
とりわけ前者を選ぼうとするなら、デフレ的な要因を及ぼしかねない。

元の記事に戻って、FOXが挙げた、引退を思いとどまるべき3つの理由とは何か。

  • 貯蓄から毎年の生活費を賄えるか理解できていない
  • 大きな借金がある
  • 暇な引退後にいくら支出することになるか把握できていない

(参考: Fox:引退するのに必要な5つの準備


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