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ハワード・マークス 引くほど理屈っぽいハワード・マークス家の親子の会話
2021年1月15日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、投資家向け「Memo」の中で、息子アンドリュー氏とのプロの投資家同士の会話を紹介している。


アンドリュー氏はグロース株への長期投資を専門とするプロの投資家で、パンデミックを機会に夫婦でハワード氏の家に移り住んだのだという。
父親は代表的バリュー投資家とされているから、本来の意味の《不肖の息子》というということになろうか。
(「不肖」とは本来、親に似ないことを指し、悪い意味とは限らなかった。)
今回の「Memo」ではバリューとグロースが話題だった。
この親子にピッタリのテーマだ。
マークス氏は付録において、バリュー投資家(H)とグロース投資家(A)の会話のエッセンスを紹介している。

H: XYZ株は今年xx%上昇し、PERはxx倍だ。
いくらか利益確定したいと思う?

A: 父さん、前にもいったけど、僕は売り方ではないんだ。
なんで売らないといけないの。

バリュー投資家は、上昇したから少し利食った方がいいと考えているようだが、グロース(長期)投資家は売るつもりがそもそもないらしい。
バリュー投資家は畳みかける。

H: 売ってもいい理由は
(a) 十分に上がった
(b) いくらか会計上の利益を上げ、利益を確定したい
(c) このバリュエーションでは割高で心配かもしれない
(d) もちろん、利食って破産した人はいない。

(おそらく編集されているのだろうが)おぞましいほど理屈っぽい父親だ。
こういう父親を持つと子どもは苦労するだろう。
と思いきや、決して不肖の息子ではなかった。
親と似ておぞましいほど理屈っぽい答が待っている。

A: まあね、でも一方で
(a) 僕は長期投資家で、株式について、売買する紙切れではなく企業を部分所有することと考えている。
(b) 投資先企業はまだ大きな可能性を持っている。
(c) 短期的な下方への変動を許容でき、その脅威こそ株式を始めるチャンスを生んだ1つの要因だった。

グロース投資家は長期投資家として現在のところ売却の意図がないことを強調している。
長期投資の部分はバフェット流を思い起こさせる考え方だ。

バリュー投資家は2点、そのアプローチの課題を指摘している。

H: でも、仮に短期的に割高になっているとすれば、いくらかポジションを削ってポケットに入れておくべきじゃないの?
そうすれば
(a) 後悔を限定し、(b) 下がった時に買えるじゃないか。

A: 巨大な可能性・強いモメンタム・優れた経営陣を備えた未公開企業に投資している場合、誰かが目いっぱいの株価を呈示してくれたとしても絶対に売らない。
優れた複利成長銘柄を探すのは極めて難しく、通常手放すのは誤りだ。
また、短期的な株価変動より企業の長期的先行きを予想する方がはるかに単純だ。
低い確信しか得られないもののために高い確信が得られる分野についての判断を軽視すべきじゃない。

この議論は必ずしもバリューvsグロースというものではないのかもしれない。
グロース(長期)投資家の発言は最近の金融環境を色濃く滲ませている。
お金はじゃぶじゃぶあるが、投資先は枯渇している。

バリュー投資家が指摘したもう1つの課題は投資分散だ。
一部の銘柄が増価することでポートフォリオのバランスが変化し、分散投資の果実が減っていく点を指摘している。

A: ゴールによっては多分そうだろうね。
何かを減らすのは、ボトムアップ評価により大きな安心感を得ていたものを売り、よりよくないもの、よく知らないもの(または現金)へ移ることを意味している。
僕にとっては、自分が強く感じるものを少数保有する方がはるかにいい。
人生で良い考えが浮かぶのは数回しかなく、得た少数を最大化したいんだ。

ここもウォーレン・バフェット氏やチャーリー・マンガー氏等がしばしば話すアドバイスを髣髴とさせる考え方だ。
偉大な投資家の考えは垣根を越えてグロース投資の世界にも根付いているのだろう。

バリュー投資家(H)とグロース投資家(A)の意見の相違は、投資先の違いというよりも投資ファンドvs自己勘定の違いなのかもしれない。
外部投資家から資金を募り、いつもベンチマーク等を気にしなければならないファンドは、競合相手をアウトパフォームしたい一方で、大負けもできない。
欲張りすぎず、損失も限定したいのだ。
一方、自己勘定の投資をしている人には大きな制約はない。
思うがまま自由に投資をしている。
それが最善のアプローチかどうかは後になってみないとわからない。


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