国内経済 投資

市場を操作し続けることの帰結:佐々木融氏
2022年4月25日

JPモルガンの佐々木融氏が、進行する円安を警戒し、市場操作の積み重ねが行き着く先を解説している。


円安は最近始まった問題ではない。
既にアベノミクスが始まった2013年ごろから円安傾向は表れ始めている。
そう言うと、アベノミクスが悪いように聞こえるが、そうではない。
円が弱くなり始めた原因は「日本企業によるキャピタルフライト」、つまり対外直接投資の急増が背景にある。

佐々木氏がReutersへの寄稿で書いている。
日本企業が様々な理由から拠点を海外にシフトし、結果、貿易黒字を稼げない体質に変わったとの指摘だ。

アベノミクスを通して継続した超金融緩和が円安に関係していないとは思えないが、確かに貿易収支は重要で本質的なポイントだ。
端的に言えば、企業が海外に出ていくから円が安くなった、との見方はその通りだろう。

佐々木氏は、この現象が他の部門にも広がっていると、読者を不安にさせる。

こうした状況下、次に日本が警戒しなければならないのは、日本企業による対外直接投資というキャピタルフライトに続いて、家計までもがキャピタルフライトを始めるリスクだろう。

これは、FPの読者のほぼすべてが当然のこととして、すでに無意識のうちに採り入れている考え方だろう。
家計も日本を見限り、海外を向いている。
あるいは、周りにそう考える人が多いから、自分も遅れるわけにはいかない。
海外移住はやはりハードルが高いから、投資で補うことになる。
問題は程度とタイミングだ。

佐々木氏の推論は読者を不安にさせる。

マーケットを操作するのが好きな日本では、外貨準備が150兆円以上あるから円安を止めるのは簡単、と言う声も上がるかもしれない。
しかし、家計の1000兆円の預金の前には、150兆円の外貨準備は小さく見える。

現役世代の多くが高インフレやキャピタル・フライトの記憶を持ち合わせていない。
後者は皆無だろうし、高インフレを経験した世代も遠い昔の記憶になった。
経済・市場とはかなり秩序あるもののように感じてきた。
それでも、オイル・ショック時にはトイレット・ペーパーが高騰した。
最近では、コロナ禍の初期にマスクや消毒剤が高騰した。
日本国債の市場だって過去急落を起こしたことが何度もある。
必ずしも合理的でないことまで含め起こりうるのが経済・市場だ。

佐々木氏の推論は読者を不安にさせる。

それだったら日本人の外貨購入に制限を設けたら良いのではないか、といった意見も出るかもしれない。
だが、日本人がそうした可能性を感じ取ったその時こそ、家計のキャピタルフライトは加速するのである。

少し懐かしい話になるが、2016年、元日銀理事の早川英男氏が『金融政策の「誤解」』という著書で、異次元緩和を解説した。
その中で、異次元緩和の出口では資本移動規制が必要になると予想していた。
今の円安が、異次元緩和の要素である金融抑圧が持続できなくなる予兆と考えるなら、資本規制が必要とされるのも必然なのかもしれない。

佐々木氏の推論は読者を不安にさせる。

そこまで行けば、それは典型的な新興国での通貨危機のパターンだ。


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