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市場を押し上げる2つの判断要素:モハメド・エラリアン

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、市場を押し上げ続ける2つの判断要素を挙げ、その危うさを警告している。


「テスラを例にすると、過去2週間で50%も上昇した。
これは基本的にテクニカルによるものだ。
バリュエーション・背景にあるファンダメンタルズ・政策環境の不確実性増大にかかわらず、投資家がある種の感情を抱き(テスラ)株価をどんどん押し上げた。」

エラリアン氏がFOX Businessで、テスラを例に、ファンダメンタルズと関係なく上昇を続ける株価上昇のドライバーを指摘した。
近時テスラについて良いニュースがなかったとは言わないが、それでも2週間で50%価値が上昇するような変化があったといえるだろうか。
この当然の疑問の答がテクニカルであり、流動性なのだという。

この市場は極めて強いテクニカルの恩恵を受け、上昇した。
これは他の何によるものでもなく、流動性によるものなんだ。

最近、市場関係者の中で気になるレトリックがある。
慎重派の人が、大規模な流動性供給や金利低下をファンダメンタルズと見ない傾向だ。
この発言でも、エラリアン氏は流動性をファンダメンタルズとして扱っていない。
もちろん、こういう分類の差異とはしょせんはレッテル貼りのやり方の相違に他ならない。
しかし、おおざっぱな話を聞かされる聞き手に与える印象はかなり異なったものになるだろう。
最近に関して言う限り、結果論として、慎重派はミスリーディングなトーンを伝えてしまったのかもしれない。

エラリアン氏は、現在の市場環境を2つの言葉で象徴させた: FOMOとTINAだ。
FOMOとは乗り遅れる恐怖のこと。
株価が上昇しているから、自分も買わなければいけないのではと思ってしまう心理である。
TINAトレードとは、本来魅力的でない投資対象でも、他の選択肢がないために投資が行われること。
金融緩和が長く続く中でかなり前から言われ続けてきた現象だ。

今日私が尊敬する友人と話した時こう言っていた。
『市場については不安がいっぱいだが、他にお金を置いておくところがない。』

全体で見れば、アメリカ人は日本人より資産形成に対して感度の高い人が多いようだ。
貯蓄の対象として預金・債券のみでなく幅広くリスク資産を検討しようとする。
文化的なものも大きいのだろうが、インフレの差も効いているのかもしれない。

米ブレークイーブンインフレ率(青:10年、赤:5年)
ブレークイーブンインフレ率(青:10年、赤:5年)

市場が予想するインフレ率の指標である米ブレークイーブンインフレ率はコロナ・ショック時に急落したが、その後回復基調だ。
5年でも1%を大きく上回る水準にある。
10年債利回りは1%を大きく下回ったままであり、こうした債券に投資してもインフレ分さえを稼げない。
さらに税金もかかる。
だから、投資家はインフレに強いといわれるリスク資産を探そうとする。
これがTINAトレードを生み、市場が上昇を続ければFOMOを引き起こす。

その点、日本人は鷹揚だ。
すでにゼロ金利であることもあろうが、それでもインフレは皆無ではないし、消費税引き上げの可能性もないわけではない。
にもかかわらず、リスク資産への関心は相対的には薄い。
言葉は悪いが、静かに屠殺を待つ家畜のような悲哀さがそこにはある。

エラリアン氏は、FOMOとTINAの2つの判断要素が市場を押し上げているとし、同時にこれらがファンダメンタルズに根ざしていない点を心配する。
ファンダメンタルズに根ざしていないものは、心理の変化を大きく受けかねない。

ショックが起こるのを避けなければいけない。
大きなショックが市場に起これば、ダウンサイドがかなりなものになる。


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