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市場はV字回復を想定しているわけではない:モハメド・エラリアン
2020年6月26日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米国株が高値圏にある理由を解説し、FRB金融政策の内包する危うさを指摘している。


「最近、市場はV字回復への賭けを減らしているように思う。
経済再開での上昇にかけるトレードがひと段落し、各国中央銀行による下支えに注目点が移っている。
だから、FRBがここで何をやるか、FRBがさらに市場価格への介入を深めるかが大きく注目されている。」

エラリアン氏がCNNで、米株価を高値圏に押しとどめているナラティブの変遷を指摘している。
《V字回復は間違っている》とばかり繰り返す人々とは異なり、感のいいところを見せつけている。

エラリアン氏はコロナ前後のファンダメンタルズの変化について、適切に金融環境の変化まで含めて議論する。
経済回復はルート形になるとしながらも、コロナ後には金融政策が強化されている事実も勘案している。

経済が大きなエアポケットに入るか、FRBが大きな間違いを犯さない限り(3月23日の底を試しに行く)可能性は低い。
その理由は、すでにFRBがハイイールド(フォールンエンジェルの下支え)に着手したからだ。
この(政策上の)戦略をすぐにやめることなないだろう。

さらにエラリアン氏は、市場の期待を代弁する。
市場はハイイールドに次いで、もしも大崩れすればFRBが株式を買い入れると予想しているという。
エラリアン氏はそう予想していないようだが、とにかく市場は予想している。
だから、米市場が3月23日の底値を再び試しにいく確率は限定的だと話す。

元PIMCOのCEOは(決して債券だけの人ではないが)債券投資家としてイメージが強い。
債券投資家のイメージどおりタカ派の意見を述べることも多い。
コロナ・ショックが起こった時も、ベアまたは保守的な意見が目立っていた。
そのエラリアン氏が、二番底の可能性が低いと語ったことはそこそこのニュースだ。
米国は極端な悲観論を語りにくい状況になったのかもしれない。

エラリアン氏はコロナ・ショックにおけるFRBの政策対応についてコメントを求められている。

「FRBの政策は市場にとっては強力なものだった。
これは落ち度ではない。
資産効果の経路なしには実体経済に働きかけるのは容易ではない。」

経済における内需の割合が高く、国民がリスク資産への投資を好む米国では、資産効果はやはり有効だ。
資産価格を支えることで実体経済を支えようとしたことは間違いではなかったとエラリアン氏は言いたいのだ。
その一方で、コロナ・ショックにこのやり方があまり効かなかったとも話す。
なぜなら、FRBが利下げしようが債券市場に流動性を供給しようが、ロックダウンの中で企業は従業員をレイオフしたからだ。
債券価格・株価を支えても、レイオフが止むわけではない。
雇用を守るのなら、財政支出による給付・支援が必要だ。

FRBがやったことについては、通常の市場機能を確保するための最初の一連の介入はよかったと思うが、最後のハイイールドへの介入にはまだ疑問を持っている。
長期的には逆効果になるのではないか。

エラリアン氏は従前から、FRBのハイイールド債務買入れについて、株式市場のモラルハザードを生むと警告している。
市場はFRBプットを信じ込み、FRBもその期待を裏切れなくなる。
裏切れば市場が暴落しかねないからだ。
FRBが市場の期待を満たし続けるなら、その行き着くところは自明だろう。
「長期的には」それが試されることになるのだろう。


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