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ウォール街 市場はV字回復を予想しているのか?
2020年6月9日

市場がコロナ・ショック前高値に近づくにつれ、ファンダメンタルズとの乖離を指摘する声が弱気派の中で強まってくる。(浜町SCI)


これまで慎重な予想を繰り返してきた人は特に、例えば《市場はV字回復を予想しており楽観的すぎる》などという。
これは本当だろうか。
少なくとも米国株市場については正しい指摘ではないだろう。
米経済が本当にV字回復すると考えているのは、高々某国の大統領ぐらいだろうからだ。

市場はしたたかに2つの回復を分別しているのだろう。
1つは経済回復。
市場が織り込んでいる経済回復はL字回復なのではないか。
よくてW字回復だろう。
代表的な指標として失業率をとるなら、失業率の回復には相当に時間がかかるはずだ。
コロナ・ショックは雇用のあり方に対し大きな問題提起をした。
ただでさえ米企業は危機をスリム化のチャンスと捉える傾向があるから、安易に雇用を危機前に戻したりしない。
雇用の回復には長い時間がかかり、これはもちろん消費に良くない影響を及ぼす。

一方、株式市場がより重要視するのは企業収益の回復だ。
こちらはV字とまでは行かなくても、それに近い回復を遂げる可能性がある。
たとえば、概ね1年のうちにコロナ・ショック前の7-8割まで戻し、そこから長い時間かけて回復していくなどと想定するなら、楽観ともいえなくなるだろう。
米企業とは、労働分配を下げてでも株主の利益を守ろうとする傾向があり、それが経済回復の果実を企業や株主に寄せてしまうのだ。

それでも、株価は2-3割下げているべきだと反論するかもしれない。
しかし、株価とは企業収益と資本コストの割り算だ。
企業収益が2-3割下げても、仮に資本コストが同じだけ下がるなら、株価が下がる必要はなくなってしまう。
昨年2%に迫る水準にあった米長期金利はそこから1%超下げた水準にある。
資本コストは3割とまではいかなくても2割ぐらいは下げたのかもしれない。
今後、長期金利は上昇するのかもしれないが、大きく上昇するならFRBが座視するかという話になる。

さらに忘れてはいけないのが財政政策だ。
空前の財政出動が打たれた時に、それが株高要因にならないと考えるのは少々奇妙だ。

つまり、市場はおそらくV字回復を予想しているのではないのだろう。
もしも金融・財政政策をファンダメンタルズとみなすなら、市場はファンダメンタルズにしたがって上げていることになる。
むしろ、問題はこの金融・財政政策が株価に及ぼす効果が持続可能なのかであろう。

もちろん、持続可能と信じ込むことはできない。
特に、財政政策についてはいつか終わる。
しかし、今年は選挙の年だ。
支援という大義名分がつく限り、あと半年ほどは続くのだろう。
その間バラまかれたお金は、コロナウィルスへの不安が払拭された時に支出されるのだろう。

金融政策については、現状並みの金融緩和状況が相当に長く続くことになるのではないか。
よほどのことがない限り、雇用回復の途上で金融引き締めに転じるとは考えにくい。
もしもあるとすれば、不快なインフレが起こるか、経済が力強く回復するかだろう。
いずれもメイン・シナリオではない。
不快なインフレなら株にはマイナス(ただし当初は債券よりはまし)だが、経済回復なら株への悪影響は大きくないだろう。

米国株市場で高まっているリスクが何かといえば、11月の選挙だ。
民主党が大統領と両院を獲り、思うがままに政策を行うケースだ。
国際社会にとっては喜ばしいことかもしれないが、米企業にとっては辛い状況になる。
法人税率の引き上げとなり、株主への分配が大幅に減らされてしまうかもしれない。


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