ブラックストーンのバイロンR.ウィーン氏が、「2021年のびっくり10大予想」で予想した米国株市場の調整の理由を解説している。
(本ビデオは当初7日公表の予定だったが、ワシントンでの暴動を受けて延期。
8日に内容を変えずに公表された。)
(市場)センチメントは変動するレンジの上限に近いところまで上昇している。
みんな、市場の調整はない、何も間違いは起きない、経済は順調だ、ワクチンが普及する、と考えている。
これはとても危険な自己満足の態度だ。
ウィーン氏がウェブキャストで、強気予想を続ける米市場について調整のリスクが高いとする理由を説明した。
同氏とジョー・ザイドル氏は「びっくり予想」において、S&P 500が年後半に4,500に達すると予想している。
しかし、年前半は20%近い調整が入るとも予想している。
その1つの根拠が、市場で高まる自己満足の傾向なのだ。
ウィーン氏は、市場心理が実際に投資家のポジションにも表れているという。
家計・外国人・ミューチュアルファンド・年金のそれぞれ、あるいは合計で見ても、ポートフォリオに占める株式の割合は大きくなっている。
合計で見ると株式の占める割合は48%。
1990年以降の調査の中で、これは上位3%(下から97%)の水準だという。
(もう1つ興味深いのは、債務性資産と現金への配分の状況だ。
債務性資産が下から7%、現金が下から19%となっている。
フィクストインカムが嫌われ、現金が嫌われている。
現金は待機資金の受け皿として、フィクストインカムよりは少しマシな扱いを受けているようだ。)
ウィーン氏は、もう1つの根拠として、これまで赫々たる戦果を挙げてきた《魔法のDDMテーブル》を呈示している。
バイロン・ウィーン氏の魔法のDDMテーブル(抜粋、2021年1月8日)
(出典: ブラックストーンのウェブキャスト)
ビデオ作成時点で米10年債利回りは1%弱、予想EPSは180だった。
金利1%と180なら、テーブルが予想するS&P 500は2,880。
金利が0.75%でも3,200。
ビデオ作成時のS&P 500の3,700前後はかなり高水準ということになる。
「現株価を正当化するには、米10年債利回りは少なくとも0.5%、あるいは0.25%にまで下がる必要がある。・・・
この表どおりの値で取引されるわけではないが、このバリュエーション・モデルは市場心理調査による根拠を補うものだ。
これが示すのは、市場が行きすぎで危険な領域にあるということだ。」
これが、ウィーン氏らが年前半の調整を予想する理由だ。
一方、年後半は再び大きな株価回復を予想している。
ザイドル氏が、今年の株価の行き先を予想する。
「実質的にすべてのバリュエーション指標が新記録を更新することになるだろう。・・・
今回の相場が終わるまでに、テック・バブルの1999年に記録したすべての記録を塗り替えるだろう。
もちろん、バイロンが先ほど『びっくり予想』の中で『リスク・オンはリスクなしでは済まない』と言ったように、ボラティリティなしに済むものではない。
ボラティリティは高まるだろうが、緩和策と過剰流動性の組み合わせにより、市場はさらに押し上げられるだろう。」
昨年末のS&P 500終値は3,756.07。
ここから2割調整すると3,000前後となる。
そこから4,500まだ上がるとなると、実に1.5倍の急騰ということになる。
仮に調整なしで上がるにしても、昨年末から2割の上昇となり、なかなかの上昇だ。
それなのに、ウェブキャストを通して必ずしもバラ色のトーンは感じられない。
ザイドル氏は、政策主導の株高がリターンの先食いの性質を帯びていることを匂わせている。
PERが28.5倍近い場合、歴史的には10年間での年率リターンはマイナスだった。・・・
これが、今の相場をより困難な長期的強気相場にするだろう。
2021年が回復の年となることで、短期的にはアウトパフォーマンスが得られるかもしれない。
しかし、これが、長期的に見て平均以下のリターンしか期待されないサイクルになる土壌を作るのだろう。