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市場はコインの片方の面しか見ていない:ジェレミー・シーゲル
2021年6月5日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、米雇用統計に対する株式・債券市場の反応を解説し、10日の物価統計に向けて不吉な予想を述べている。


期待外れだった。
先月の記録的期待外れほどひどくはなかったが、人々が労働に戻ってきていない。・・・
人々が戻ってこなければ、さらに物価に圧力が加わる。

シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、米労働省が4日発表した5月の雇用統計についてコメントした。

5月の米雇用統計は

  • 非農業部門雇用者数: 前月比559千人増(市場予想650千人増(Reuter)
  • 失業率: 5.8%(前月比0.3%改善)
  • 平均時給: 前月比0.5%増、前年同月比2.0%増

雇用者数は予想に達しなかったが、平均時給の伸びは高水準だった。

シーゲル教授が期待外れといったのは雇用者数だ。
現在、米国では順調なワクチン接種の進展で急速な経済再開が起こっている。
需要は急拡大しているが、供給が追い付いていない。
供給力を決める1つの要素が労働力だ。
労働力が十分に戻らないと、供給力が拡大せず、インフレ圧力が高まる。
インフレが上昇すれば、FRBが金融政策を正常化せざるをえなくなり、いつものようにそれが経済にブレーキを踏みかねない。

シーゲル教授は、従来通り、インフレ上昇への警戒を緩めない。
今回の雇用統計でも、賃金上昇や労働参加率の低下が見られると指摘した。
足元のインフレを一過性とするFRBとは対照的なスタンスだ。
教授は、今回の雇用統計に対する市場の反応を解説する。

「私が率直にいって驚いたのは、債券市場が10年債(利回り)を(一時)約6 bp下げて反応したこと。
債券保有者は、FRBがテーパリングを議論し始めるほど雇用統計が良くなかったと考えたのだろう。」

シーゲル教授は、債券市場に多くのショート・ポジションがあったと指摘する。
そこに、雇用統計はそれほど良くないからテーパリングは近くないとするナラティブが広がったと想像する。
結果、ショートをしていた人たちがロス・カットに動き、債券が買われ、利回りが低下したと解説した。
しかし、教授によれば、その行動はコインの片方の面しか見ていないという。

債券市場はそれ(テーパリングが近くないと思われたこと)に集中し、これらの数字が後になってインフレを高めることに注目していない。

(参考)4日の米市場:

  • S&P 500:  4,229.89(前日比+0.88%)
  • ダウ平均:  34,756.39(同+0.52%)
  • NASDAQ:  13,814.49(同+1.47%)
  • 米10年債利回り:  1.557%(同-0.003%ポイント)

シーゲル教授は、株式市場が上昇したのも債券市場に同調したものだろうという。
特にテクノロジーが大きく上げており、利回り低下の恩恵を受けたものという。

シーゲル教授は、次の重要な日程を10日(木)とした。
CPIの公表日だ。

木曜日がカギになると考えている。
来週、木曜日の数字への心配が市場に織り込まれていくにつれ、債券の上昇(=利回り低下)が消されていくだろう。


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