市場の過信はFRBから貿易戦争へ:モハメド・エラリアン

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、米雇用統計にコメントした。
今後12か月内の米景気後退入りは考えにくいとし、今後の投資戦略について解説している。


「労働参加率や労働力人口比率が小幅に上昇している。
これはいいニュースだ。
主たる疑問は、軟化している世界の製造業の影響を労働市場が回避できるかだろう。」

エラリアン氏がBloombergで、米雇用統計についてコメントした。
6日発表の8月の雇用統計は

  • 非農業部門雇用者数: 130千人(市場予想160千人)
  • 失業率: 3.7%(横ばい)
  • 平均時給: 前年同月比3.2%
  • 労働参加率: 63.2%(前月比0.2%ポイント上昇)

エラリアン氏はこの結果をまずまずの出来と評価。
雇用者数は予想を下回っているが、そもそも永遠に月200千人の雇用を生み続けることはできないとコメントしている。
エラリアン氏は不安材料の存在を認めつつも、米経済はそれほど悪くないと見ている。

いくつか黄色信号が点滅を始めたが、赤信号はまだだ。
自らその道を選ぶか大きな政策の失敗がない限り、今後12か月のうちに景気後退となる確率はかなり低い。

市場が騒ぐイールド・カーブ長短逆転についても、エラリアン氏の警戒感は限定的だ。

「FRBは(イールド・カーブ)の短期側をコントロールしてきた。・・・長期側はコントロールしていない。
欧州は自身のイールド・カーブに大きな影響を及ぼしている。
このため、米国は15-16兆ドルものマイナス利回りの債券からのプレッシャーを感じている。」

主に欧州の極めて低い長期金利が米長期金利を押し下げているとの見方を示したものだろう。
もしも、この影響がイールド・カーブの逆転の主因であり、米経済がさほど悪くないなら、なぜFRBは利下げするのか。
市場が悪影響を受けているのは事実だが、それは誤解に基づく単なる市場の独り相撲にすぎないのではないか。


エラリアン氏は、FRB金融政策があるべき道から逸れる可能性を指摘する。

次回のFOMCについて興味深いのは、FRBのなすべきことよりはるかにFRBが行うことを予想する方が容易だということだ。
・・・
FOMCでは可能性ではなく必ず25 bpの利下げが行われる。

仮にエラリアン氏が可能性を暗示するように、FRBが金融緩和すべきでないところを金融緩和するのなら、それは何を意味するだろう。
経済と市場の過熱だろう。
これは短期的に喜びを、中期的に悲劇をもたらすかもしれない。

もっとも、エラリアン氏はその点をあまり心配していないようにも見える。
米国はすでに中央銀行の景気刺激の能力への過信から脱しているという。
金融政策はかなりやりきっており、今後は他の政策手段を用いるべきとのコンセンサスが生まれつつある。
そう考えながらも、エラリアン氏は、市場がいまだに政策への過度な期待を抱いていると警戒する。

「今では、貿易摩擦に対する過度な楽観に頼っており、注意が必要だ。
米中摩擦は長く困難な交渉になる。
すぐに解決できるものではない。」

多くの市場関係者が、トランプ大統領の米中摩擦に対するスタンスを来年の米大統領選と関連付けて考えている。
選挙前の最高のタイミングで中国と手を打ち、経済・市場を好転させ、再選に有利な演出を行うと予想している。
本当にそんな都合のいいことが可能かどうかはわからないが、そうしようとしていると考えている。
これはつまり、市場が市場以外の意思によって操作され続ける、あるいは横やりを受け続けることを意味する。

エラリアン氏は、こうした不透明な時期の投資戦略を解説する。

選別に努めろ。
セクターを相当絞り込め。
貿易できないものに注目しろ。
この環境では国内向け事業を営む企業がいい。

一方、短期売買のトレーダーにもメッセージを送っている。

「もしも短期のトレーダーなら、今のレンジ相場でスウィングすることもありうるが、それはとても危険だ。
ツイートやアルゴリズム取引によって、大きく相場を変えられてしまうかもしれない。」


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