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市場の織り込み度合いは78%:ジェレミー・シーゲル
2019年11月24日

ウォートンの魔術師ことジェレミー・シーゲル教授が、市場による米中合意の織り込み度合いについて不気味に刻んだ数字を口にした。


「市場は貿易合意に関して極めて楽観的だと思う。
12月15日に25%関税が発動する可能性はまだゼロではなく、もしそうなれば市場は大きく売られるはずだ。
おそらく15-20%の確率で弱気相場入りしてしまうだろう。」

シーゲル教授がBloombergで、米中摩擦の米市場へのインプリケーションを語った。
教授の予想は従前から変化ないが、話順がやや慎重になったかもしれない。
まずリスク側から話しているためだ。
もっとも、そこは《永遠のブル》と呼ばれるシーゲル教授だ。
強気の見方も決して忘れない。

「その確率はかなり小さいと思う。
そうした下落があれば、景気後退のリスクが大きく増大し、トランプ大統領の2020年の選挙での勝率を破壊してしまうだろう。
たとえ、後になって何か合意に行き着いても、これは大きなショックになる。」

米政治も市場も昨年あたりから大騒ぎが続いているが、結局のところ《大統領サイクル》は健全のようだ。
大統領選の前年、米市場は他の年をアウトパフォーマンスする傾向にある。
知ってか知らずか、選挙の年に景気がよくなるよう、金融・財政刺激策が講じられるためだ。
シーゲル教授の解説は、これを裏側から読んだものだ。

シーゲル教授は今後のワースト・シナリオを説明する。

「今考えられる最悪のケースは、いつまでもぐずぐずすることだ。
言い換えると、関税問題を先延ばしし、今の状況をだらだら続けることだ。
市場もぐずぐずし上昇できないだろう。」

もっとも、トランプ陣営の方は、シーゲル教授が考えるより、もっと用意周到かもしれない。
再選のために外交さえ利用する人たちだから、何をするかわからない。
米中交渉についての最近の錯綜した報道を見ると、政策の効果波及にタイムラグがあることを知った上で、タイミングを計っているようにさえ見える。

シーゲル教授の予想は従前から変わらない。
米中が何らかの合意に達するか否かで場合分けをしている。

  • 合意できず: 「市場には悪い結果」
  • 合意: 10%程度の「短期的な上昇」

この予想の中で、シーゲル教授は妙に刻んだ数字を口にしている。

今後3か月の間に何らかの合意に達する確率について、市場は78%と予想しているようだ。

これだけ刻んだ数字を出すということは、何かしらの根拠・算式のある数字なのだろう。
注目したいのは、約8割と高い確率になっている点である。
シーゲル教授の発言は(厳密ではないかもしれないが、ほぼ等価として)市場が合意を78%織り込んでいると読み換えることができる。
仮にこの織り込みがなかりせばの株価をx、合意で上昇すべき株価上昇率をyとすると、現在の株価は
 x(1 + 0.78y) ・・・(1)
となる。
ちなみに、合意が実現した場合は当初の定義によりx(1 + y)まで上昇するはずだ。
現在と合意後の株価の差は0.22xyとなる。
シーゲル教授によれば、これが現在の株価(1)の10%にあたるというのだ。
 0.1x(1 + 0.78y) = 0.22xy
xは消え、yを解くと0.70になる。
(合意で7割上昇とは恐ろしいインパクトのイベントだ。
逆に言うと、貿易摩擦がこれまで株価を抑え込んできたということか?)

このyを(1)式に代入すると現在の株価は1.5xとなる。
(すでに70%上昇のうちの50%ポイントが織り込まれている!)
合意がなければ株価はxだから、1.5xがxに下落する。
つまり、合意のない場合の下落率は1/3である。
一般的に弱気相場とは20%の下落とされているから、シーゲル教授の言うように弱気相場に陥ることになる。

(本稿では単純な目の子計算での解説にとどめた。
読者の中にベイズの定理等に習熟している人がいれば、さらに面白い論考が可能になるであろう。)


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